昔トルコで長距離バスに乗ったときに見た、
テレビや雑誌に登場する砂漠のイメージを裏切る、
ところどころに岩肌を露出させた荒々しく、それでいて雄大な砂漠。
見渡す限り人ひとり確認できないそんな景色の中、
バスを降りて、ひとりとぼとぼと歩いていく老人・・・。
私にとって、スエードとは大好きな「砂漠」と「旅」をイメージさせる特別な素材。
その品質云々を超えて、見ているだけで愛おしくなってしまうのです。
だから、今季シップスの展示会で見つけたスエードジャケットにも、
心が激しく衝き動かされました。
その名は「モヒート」。アーネスト・ヘミングェイが愛したお酒の名前です。
聞けばこのブランド、まさしくヘミングウェイをイメージして立ち上げられたもので、
メンズプレシャスでも執筆いただいているライター、
山口 淳さんがカタログの文章を手がけられていました。
そして幸運なことにデザイナーの山下裕文さんとお会いすることができ、
1枚の服に込められたこだわり、その情熱を知ったことで、
私は迷うことなくこのジャケットを購入したのです・・・。
デザインは米軍のミリタリージャケット「M-43」がモチーフ。
とても丁寧な仕立てに、山下さんの人柄が垣間見えます。
裏地は総裏仕様で、ネイビーのペイズリー柄。
MOJITO.
CAPTURE THE SPIRIT
with apparel that's rough,rugged,strong
AND STYLISH. Be ready for incredible
adventures,ENCOUNTERS AND MORE.
In the field,on the sea, or in the club.
SALUTE LIFE!
タグに書かれたメッセージが、心を躍らせ、旅へと誘ってくれます。
そして私が何より驚いたのが、このディテール。
見慣れないマークですが、よく見ると
チャールズ・F・ステッドと書かれております。
そう、靴好きにはおなじみのスエードタンナーの名門ですが、
実はデザイナーの山下さん曰く
「クラークスのデザートブーツが好きで、
同じ革を使っているんです」とのこと!
これと同じ!
肉厚かつ弾力感あるスエードの手触り、どうりで・・・!
恐らくこのほかにも、きっとマニアを唸らせるディテールが
詰まっていることでしょう、モヒートのスエードジャケット。
しかしこの服に関しては、そればかり語るのは
野暮なような気がするので、控えめにしたいと思います。
「これを着て、どこかへ行きたい!」
そんな理屈では伝わらない気持ちを伝えるために作ったのが、
きっとこの服なのしょうから・・・。
私はこのジャケットを着て、15年ぶりに砂漠を見たいと思います。
※紹介したモヒートのジャケットは、シップス銀座店で購入可。
もうひとつの力作であるショーツはビームスプラス原宿で購入できます。