今回は、

この春のお洒落映画をご紹介。

まずは

「ファンタスティックMr.FOX」

こちら、シネスイッチ銀座でまだ公開中のようです。

Mr.FOXといううぬぼれ屋のキツネを主人公にした

パペットアニメーションなのですが、

この映画を監督するのはウェス・アンダーソン

そう、ゼロ年代のファッション界に多大な影響をもたらした

作品『ザ・ロイヤルテネンバウムス』の監督であります。

一度でも観たことのある方ならお分かりかと思いますが、

映像、ファッションを含めた彼のビジュアル感覚は

それだけでお金を取れるひとつの「芸」。

彼の映画を観るときは、画面の隅々まで目が離せません。

そして実際の彼自身も、かなりのスタイリスト。

きまってN.Y.のテーラーでオーダーしたスーツに、

シャルベのオーダーシャツを組み合わせています。

この『Mr.FOX』の中でも、そんな彼のセンスは遺憾なく発揮されており、

主人公のMr.FOXが着ているコーデュロイのスーツは、

ウェス氏愛用のスーツのミニチュア版。

しかも生地までまったく同じだそうです。

中畝のブラウン、ダブルブレストのくるみボタン、

胸ポケにはチーフ代わりに麦の穂を挿したりして。

この秋、真似して僕も仕立ててみようかと思っています。

そして

『SOMEWHERE』

ソフィア・コッポラ監督。

というだけでお洒落な映画であることは、もはや約束されています。

東京を舞台にした03年の

『ロスト・イン・トランスレーション』は、

もはやファッション業界人にとって伝説的作品。

パークハイアットに初めて泊まったときは感動したものです。

『SOMEWHERE』のストーリーは、大まかにこんな感じ。

すさんだ生活を送るハリウッドセレブが、

ひょんなことから前妻との間の娘と生活を共にすることで、

忘れていた大切なものを取り戻していく・・・。

ストーリー上の大きな起伏などはなく、

セレブの淡々とした日常がつづられます。

しかしこれが妙に沁みる。

ハリウッドセレブで色男、そしてバツイチ。

自分とは年齢くらいしか共通点がないのに、

無性に彼の心境に共感を覚え、

自らのロクデナシ人生を反省してしまいます。

それはきっと、セレブにもファッション業界人にも

コンプレックスをもつ必要がない、

ソフィア・コッポラ監督のルーツがなせる業、なのでしょう。

主人公のファッションは雑誌でいうと『サファリ』系なのですが、

舞台であるL.A.と、そこに実在するホテル『シャトー・マーモント』の

けだるくも澄み切った空気・・・。L.A.とは一生無縁だと思っていた

私ですが、この洒落た雰囲気にはやられました。

ぜひL.A.旅にチャレンジしたいですね!

この記事の執筆者
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。
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