ザ・ワゴンと呼ぶにふさわしい存在感とライバルを凌駕する実用性、走り、安全性が備わったボルボV60。その佇まいにはジャーマン・プレミアムとはひと味違ったステータス性が備わっていた。自動車ライターの佐藤篤司氏がリポートする。
美しさを損なわずに実用的なサイズダウンを敢行
北欧のプレミアブランドであるボルボの存在感が、日本でも増してきている。昨年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したXC60、そして今年はコンパクトSUVの本命として上陸してきたXC40が売れ行き好調。どちらも、かなりの納車待ちが発生しているという。
しかし、よく見ればどちらもSUV。もちろん、この2台のSUV、出来映えはどれも高評価に値する仕上がりで人気の理由も分かる。それでも、時代錯誤といわれるかもしれないが、ボルボの本筋はステーションワゴンという思いを抱いてしまうのだ。だから新型V60の日本導入は、個人的にとても興味が湧いた。
2011年に先代が登場し、久し振りのフルモデルチェンジとなる新型。走らせてみれば、さすがと思えるポイントがいくつも見つかった。まずはワゴンにとっての必須項目、ラゲッジの広さを含めた実用性だ。旧型との比較では全長が125㎜延びたこともあり、リアシート使用時でもスペースは529リッター。旧型が430リッターだったので、実に99リッターも広がっている。あくまでも車格が近いということでの比較だが(クルマはそれだけで比較検討すべきでないと思っている)、メルセデスのCクラス・ステーションワゴンが460リッター、BMW・3シリーズ・ツーリングは495リッター、さらにアウディ・A4アバントが505リッターとなり、V60の広さがお分かりいただけるだろう。
さらにV60のスペース取りはスクエアであるため、デッドスペースも少なく、一見して使いやすいことがわかる。それでいてリアシートのスペースも拡大されているのが、このクルマの素晴らしい点だ。
もうひとつの注目点だが、車幅は先代モデルより15㎜狭くなって1850㎜に。ボディが拡大傾向にある昨今、サイズダウンは珍しい。インポーターの説明によれば、これは日本側のリクエストによって「本国の開発陣が決定した値」だという。おかげでドライブ上のストレスは軽減するし、機械式駐車場にも入れやすい。
ディーゼルもあれば完璧だが…
そんなワゴンとしての本筋を踏まえた仕上がりを実感しながら、質感が向上したコクピットに収まり、テストドライブを始める。パワーソースには従来からある318馬力のエンジンにモーターを組み合わせた「T8ツインエンジン」と、新設された253馬力のエンジンに87馬力のモーターを組み合わせた「T6ツインエンジン」の、2タイプのプラグインハイブリッド。そして出力254馬力の、2リッター4気筒ターボエンジンのガソリンモデル「T5ターボエンジン」が1タイプ、合計3タイプが用意された。
ステアリングを握ったのは「T5 インスクリプション」。動力性能としては十分であり、しっとりとした乗り味をスポイルすることはほとんどなかった。ロードノイズや風切り音などを考慮し、総合的にみても静粛性が高く、快適なキャビンが保たれていてプレミアムの名に恥じない仕上がりだった。唯一の懸念は、ユーザーからの支持が高いディーゼルエンジン車の展開が未定である点。XC60にはあるのになぜ?
これに関してインポーターは「V60の販売戦略上の問題で、日本市場にはこの先も導入予定はない」ということだが、その真意は見えにくい。
テストドライブを終えて、ワゴンの佇まいのキモであるサイドからリアにかけてのスタイルを眺めてみる。伸びやかなルーフラインは美しく、旧型にあった丸く、少々ぼってりとした印象の後ろ姿が、すっきりとシャープに変身している。しかも、夜間に見たコンビネーションランプは煌びやかで都会的な印象だ。この仕上がりを体験して、「やっぱりボルボの本筋はワゴン!」と実感した。
【ボルボ・V60 T5 インスクリプション】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,760×1,850×1,435㎜
車重:1,720kg
駆動方式:前輪駆動
エンジン:1,968cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8AT
最高出力:254PS/5500rpm
最大トルク:35.7kgf-m/1,500〜4,800rpm
価格:¥5,546,296(税抜)
問い合わせ先
- ボルボ TEL:0120-922-662
- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター