「定番」と呼ばれるものって、いつかお金が貯まったら買おう!とか、まだまだ俺には早いかな・・・なんて思って意外と買わなかったりしますよね。しかしそれは大きな間違い。定番だっていつかは廃番になったり、会社やブランドが消滅してしまったり、モデルチェンジしてしまったり、主要人物が亡くなってしまったり、生産国が変わってしまったり・・・永遠じゃないんですよね。なので本当に欲しいものは買えるときに買わねばならんのです。

僕も長年生きてるとタニノクリスチーのジョッパーブーツとか、エルメスのいろいろとか、買い逃し後悔アイテムは様々あるのですが、その中でもダントツNO.1が今はなきアルニス。今でも「フォレスティエール」はeBayなどで常に狙っているのですが、みんな大事にしているのか、なかなかセコハン市場に出てきません。

そんな状況下ですから、古着屋さんでこれを見つけたときは速攻で試着→購入しましたよ。「フォレスティエール」ではないものの、いかにもアルニスらしいヘリンボーン柄コットンのジャケット。袖口の折り返し仕様や、Vゾーンの狭い4つボタンというデザインがたまりません。

昔僕がアルニスのジャケットを買わなかったのは、高価なプライスもあるのですが、エレガントすぎて合わせる洋服がなかったから。でもよくよく考えるとこのブランドのデザインって、アーティスティックではあるが決してドレッシーではない。むしろ、どこかカジュアルだから、僕みたいな仕事の人間にはとても取り入れやすいんです。このジャケットだって高級感はあるけれど、そのデザインソースはおそらくワークウエアでしょう。だからアルニス流でいくのならカラフルなシルクシャツに乗馬パンツ、コルテあたりの革靴を合わせるのでしょうが、たとえばリネンのバンドカラーシャツにネイビーのフレンチワークパンツ、足元はオールデン・・・みたいな着こなしにも十分対応するわけです。

齢40にして、ようやくアルニスの真価に気づいた僕。・・・やっぱり「フォレスティエール」がほしい!

この記事の執筆者
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。