ここ数年、男のジャケットとともに、バッグも柔らかくなってきました。

「鳥が先か、卵が先か・・・」な話ではありますが、

ボリオリのような軽い、ソフトな仕立てのジャケットに、

昔ながらの構築的なバッグは似合わない。

ということで男のジャケット&スーツスタイルに

トートバッグというスタイルは、もはや定番。

そんな日本でのトート人気はイタリアにも影響をもたらしているようで、

最近イタリアファッション業界人のトート人口も激増しています。

実はちょっと前まで「男がトートなんて、ちょっとカマっぽくない?」

なんて考え方もイタリアでは跋扈していましたからね!

とまあ、そんな潮流がしばらく続いたのですが、

今年からファッション業界人の間で醸成されつつあった

「そろそろカチッとした格好がしたいなぁ・・・」という気分が

          ↓

数年後「このフニャフニャのトートじゃ、ちょっと合わないかなぁ・・・」

になっていくような気がしてなりません。

ただしかし、それが即ガチッとしたブリーフケースや

ダレスバッグには繋がらないわけで。

そんなこれからの気分を形にしたバッグ、どこかにないかな?と

私が探し求めたのが、こちらです。

ミュージックバッグ!

かつては楽譜を入れるために使われていたこのバッグは、

英国好きなら懐かしさいっぱいのクラシック名品でしょう。

かつて英国靴の老舗ロイドでも取り扱っていましたよね。

今はもうなかなかお目にかかれませんが・・・

しかし、この形・・・

こちらは裏側。素材には重厚な本物のブライドルレザーを使っています。

この真鍮製のバーでフラップを固定する仕組みです。

カッチリしていても軽妙!

クラシックなれど、お堅くはなく少しアーティスティック。

そして、そのミニマムさと構築感は、

どこかモードな雰囲気も・・・!

ということで実践。(バッグの裏側向けちゃってますね、テヘッ)

●「サイ」のマント

●「イヴ・サンローラン」のカフタンシャツ

●「ヴィガーノ」の2タックスラックス

●「ヒロシツボウチ」のネイビーコードバンキャップトウ

● オーダーのベレー帽

●「オリバーピープルズ」の丸眼鏡

という着こなしに、ほのかにアーティスティックな

風情漂うこのバッグを合わせれば・・・ほら!

イメージは「書生モード」

(第二期サディスティック・ミカバンドみたいなイメージ、わかるかなぁ?)

現実は「浅草のバイオリン漫談師」

の完成です・・・。

うーん、私が合わせるとどうもトリッキーになってしまいますが、

このバッグ、とにかく使えるヤツだと思います。

クラシックなスーツに合わせても堅くはなりすぎず、

どこか洒落た雰囲気が漂わせられますし、

ミニマルかつアーティスティックな雰囲気なので、

モードブランドの服にもよく似合います。

そしてもちろん重厚になりすぎないので、

今流行っている「ソフトジャケット」スタイル・・・

例えばアンコンジャケットに細カーゴなんて着こなしにも合わせられ、

そこに「本物感」を纏わせられる。

柔らかトートも便利ですが、

これから買うなら、こんなバッグが見逃せませんよ。

実は、今回この素敵なバッグを購入したのは、

あの靴修理ファクトリーの名門

ユニオンワークス

最近はトリッカーズやシュナイダーブーツの別注でも

名を馳せるこちらが、ついに靴だけに飽き足らず、

バッグの分野に進出したというわけです!

こちらは使い勝手が良さそうなブラウン。店主中川さん所蔵の

アーカイブをもとに英国のファクトリーに別注したこだわりの品は、

とにかくブライドルレザーの厚みが素晴らしい、一生ものです。

(最近は薄いのが多いですからね)

そして気になるプライスは¥54,800。

実は最近英国製のバッグってなかなかいいのが

日本で売っておらず、これならアリかな?と思えるモノが

いきなりスウェインアドニーの30万円モノだったりするので、

このバッグの登場は個人的にも嬉しい限りです。

それにしても今、英国靴や英国ファッションが注目されていますが

ノーマークだったバッグにも、改めて視線を向ける必要がありそうです。

ちなみに「サッチェル」と呼ばれる向こうの学生鞄も今英国で大人気。

(日本では既に、コム・デ・ギャルソンでも扱っていますよ)

そう、来年はバッグにも変革の予感です。

この記事の執筆者
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。
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