平林洋服店。

どこにでもある街のテーラーさんのような名前ですが

(実際街のテーラーなのですが)、

今私はこのテーラーに夢中です。

なぜなら・・・・

こんな洋服がオーダーできるから!

米軍のM-43フィールドジャケットを

イタリア製のソラーロ生地で製作。

し、か、も・・・

いわゆるファクトリーメイドではなく、

パターンから縫製まで

サロン内での完全ハンドメイド。

ボタンホールなどは手縫いです。

サロンにはイタリア帰りの職人さんがいらっしゃって、

ふたりでチクチクつくってます。

そう、洋服好きなら誰もが憧れてしまう、

普段着のオーダー。

平林洋服店とは、そんな夢を叶えてくれる稀有なサロンです。

・・・いや、カジュアルオーダーって、

他のフルオーダーサロンでもできなくはないんです。

ただ、そこにはいくつかの問題が。

①選択肢が広すぎて感度のチューニングが難しい

=後からトラブル発生の可能性が高い。

②普段着としては致命的なほど、プライスが異常に高くなってしまう。

そんなわけで、積極的にこれを推奨するサロンはあまり存在しません。

ただ、平林洋服店の代表、平林伸元さんはそんな悩みを、

パターンオーダーという手法で解決しました。

ズラリ。

ヒッコリーのジャケットやホワイトのシャツジャケット、

ショップコート、モッズコートなどなど・・・。

あらかじめ揃えたパターンをもとに生地を載せかえるという

手法をとれば共通のコンセンサスがとれますし、

新たにパターンを起こす必要がないので、価格だって抑えられる。

でも仮縫い付きですし、個人的な感覚でいうとフルオーダーに

限りなく近いパターンオーダーだと思います。

このように業態自体もとても興味深い平林洋服店ですが、

やっぱり最大の魅力は、

センスがいい! これにつきます。

実は平林さんは私と同じ'70年代後半生まれ。

アメカジにはじまりフレンチ、デザイナーズ、モッズ、

裏原宿、ヴィンテージ、ドメスティック、クラシコイタリア・・・と、

史上類をみないほど多様なファッション文化に

触れてきた世代なのでは?と思います。

そんなセンスに日本とイタリアにおける最高峰のテーラー、

そしてセレクトショップの腕利きパタンナーとして活躍してきた

技術が加わったことで、恐らく現在世界中のどこにも

存在しないであろうテーラー、平林洋服店は生まれたのでしょう。

インターネットの浸透による価値観の多様化は、

ひと昔前のようなトレンドの巨大なうねりを

産み出しにくくなっています。

股上の浅いジーンズも深いジーンズも、

丸い靴も尖ってる靴も同時に流行り続ける、そんな時代。

従来のテーラーは「街」についていた存在ですが、

これからはそれが「同じセンス、価値観を共有する

コミュニティ」になり、再び隆盛のときを迎えるのかもしれません。

大量消費社会の行き着く先が、新たなるテーラー文化。

個人的に平林洋服店は、そんな時代を

先取りした存在のような気がするのです。

さて、そんな分析はここら辺にしておいて!

私のオーダータイムのスタートです。

今回私がオーダーしたのは、

世界屈指の洒落者、

ダヌンツィオ風コットンスーツ!

パターンではなく、フルオーダーです!

生地はMEN'S Precious昨冬号でこのお店を紹介した際に撮影した、

モッズコートと同じ生地。カチョッポリのコットンです。

色調自体は軍パンなどによく使われそうなオリーブグリーンなのですが、

こちらはしっとりしていて高級感たっぷり。

実はもう既に仮縫いを済ませており、

今月中には納品の予定。楽しみだなぁ・・・。

余談ですが平林洋服店には

ウィメンズのサンプルも多数あり。

私は男性なのであまり分からないのですが、

なんとなく女性もののオーダーサロンって、

蓮舫みたいなのが多いですよね?

(あくまでも否定はしません)

その点平林さんのウィメンズは、メンズライクで軽やかでお洒落!

セレクトショップ育ちの方ならきっと満足できると思います。

平林洋服店/ABITO

東京都渋谷区恵比寿2-2-16 2F

☎03-6450-2254 ※完全予約制

abito@shore.ocn.ne.jp

というわけで、

約1ヶ月ぶりの更新なのにしれっと再開してみました。

すみません・・・。

この記事の執筆者
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。
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