パリです!

ピッティ入りの前は、パリに行っておりました。

15年ぶりのパリ。以前ここを旅行したのは大学生時代。

当時はリュックを背負ったバックパッカースタイルで、

宿泊はユースホステル、食事はもっぱらバゲット。

それが今はジャケット姿でスーツケースを転がし、

4つ星ホテルに泊まる大人スタイルですから、

本当に隔世の感があるなぁ・・・。

今回こちらを訪れた最大の目的は

ずばり言ってアルニスにありました。

そう、セーヌ左岸のセーブル街14番地にある、

1902年創業の老舗メゾン。

右岸のエルメスに対して「左岸のアルニス」

と言わしめた、まさしく名門であります。

日本に輸入されてきた商品はよく撮影などで目にしており、

そのイギリスともイタリアともまるで違う

貴族的、芸術的クラシックの世界には

ずっと注目しておりました。

はじめて体感する「美意識の殿堂」。

それは本当に素晴らしいものでした。

紫、うぐいす、かぼちゃ色など、

なんともいえない中間色の洪水。

ソックスだけでこのラインナップ!

山下・大注目のつなぎ!

しかしこちらはネクタイをベルトがわりに締める

なんとも高貴なスタイルです。

そして圧巻は、当主である

ジャン・グランベール・アルニスさんが自ら手がける

色ごとにまとめたウインドー・ディスプレー!

枯葉のようなブラウン。

森や草むらのようなカーキ。

パリが夜になる直前にだけ一瞬見せる、

空の色のような深いブルー!

・・・激しく感動しました。

どんなに古き良き時代が過ぎ去っても、

アルニスのオーラが充満したここだけは、

1920年代のパリそのもの。

その芸術的なウィンドウを眺めていると、

まるで自分がヘミングウェイやコクトーと

同時代に生きているような錯覚に陥るのです。

そしてウディ・アレンの映画

『ミッドナイト・イン・パリ』で、

パリの黄金時代に憧れ、

ゴールデン・エイジ・シンドロームに陥った

主人公の気持ちがよ〜くわかります!

実はこのお店を訪ねたのは、

アルニスがLVMHグループに買収されるという

ビッグニュースを聞いた直後だったのです。

マーケティングとは無縁の、ささやかなメゾン。

そしてヨーロッパの貴族文化を今に伝える、奇跡のメゾン。

時代の流れに抗うことはできませんが、

ここだけはいつまでも残っていてほしい。

でも・・・。

そんな思いを込めて、ウィンドーディスプレイを

目に焼き付けた私でした。

あと、買い物もね!

パリ編、次回に続きます!

この記事の執筆者
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。
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