雑誌『Precious』6月号では特集「ラグジュアリー・パフェ図鑑」を展開。ときめくルックス。ジュエリーのようなフルーツの輝き。かさねの色目のようなレイヤー。今、パフェの進化が止まりません。
それは、身近な異世界。大人心をとらえて離さないラグジュアリーなパフェをお持ちしました。この特集のなかから、本記事では、パフェ評論家 斧屋さんから伺った「ラグジュアリー・パフェ」についてのお話と、ナミ ザイモクザの「さくらんぼのパフェ」をご紹介します。
大人を魅了するパフェならではの「層構造」
子供の頃は大好きだったのに、気付けばいつからか、パフェをオーダーすることがなくなっていた…という大人も多いかもしれません。その間に、今、ものすごいスピードでパフェが進化。酪農が盛んな北海道で、お酒を飲んだあとなどに定着していた「シメパフェ」カルチャーも、今では全国に広がっています。
喫茶店やフルーツパーラー、レストランやバーなど、パフェを提供するお店はさまざまですが、なかでも注目は、パティシエがつくるパフェ。近年、アシェット・デセール(皿盛りのデザート)をコースで提供する専門店も増えているなか、パフェをメインで出す店も。透明のグラスにいくつものパーツを重ねた仕立ては、ジュエリーを散りばめた芸術作品のようであり、その造形美は小宇宙のようです。
エンタメとして、文化としてのパフェの魅力を、パフェ旋風が巻き起こる前から発信し続けているパフェ評論家の斧屋さんは、「パフェの魅力やこだわりは、層構造に表れる」と言います。
パティシエのパフェで「物語」を味わう
「パフェは縦構造で、『上から食べるしかない』もの。食べる順番が決まっているので、つくり手は味の重なりや変化を計算し、順番どおりに食べると美味しくなるようにデザインします。その流れを意識して食べるとより美味しく楽しめます。僕がパフェで重視することのひとつは、いちばん下の層が美味しそうかどうか。映画や音楽などの芸術がだんだんと深みを増していくように、パフェも後半に進むにつれて盛り上がっていくものが理想ですね」
旬を迎えたジューシーなフルーツの周りには、軽やかにとけるクレーム・シャンティ。香り高いジュレ、サクサクとした食感や音も心地いい自家製クランブル。そして、飴やゼリーなどを使った美麗な彩り…。どのパーツにもパティシエならではの細やかな技、静かな情熱が感じられ、それが自然とグラデーションになっていく味わいは至福です。
パフェは見栄えや味に目が行きがちですが、斧屋さんは「香りを意識しながら食べてみてほしい」と言います。
「パティシエがつくるパフェで見事なのは香りです。よい香りが、トップ、ミドル、ラストとある香水の香りのピラミッドのように移ろいます。できたてを食べるしかないというライブ感と、物語性もある。食べているときの没入感の高さは、ほかのスイーツにはないものです」
海外に同じようなものはなく、日本文化のひとつとなっているパフェ。6月はさくらんぼやあんず、7月は桃など、季節のフルーツを主役にした美しいパフェは、まさにラグジュアリーな愉悦。エレガンスが満ちる極上の月替わりパフェをお楽しみください。
「さくらんぼのパフェ」ナミ ザイモクザ|鎌倉
まるで美しい天空の城。異世界の住人になったかのような甘酸っぱいときめき
フードディレクターのさわのめぐみさんが2021年、鎌倉に移住して始めたのが休日喫茶室。始まりはプリンだった。それが少しずつ立体的になり、いつしか美しい月替わりのパフェが誕生。
この日は、6月のテーマであるさくらんぼを使って。マカロンを乗せたパイ生地をかじり、きいちごとライチのジェラート、さくらんぼと食べ進めると、ほうじ茶のクリームやパンナコッタで、しっとりと甘やかなゾーンに。エピローグはチェリーのコンポートで名残惜しい甘酸っぱさに包まれる。
「上から順番に食べるパフェは、コース料理と同じ。さっぱりとした後味で終わるように工夫しています」
このパフェは、7皿のコース料理のメインとして登場。食べたら、消える。でもさわのさんのパフェは記憶に残り続ける。
〈仕立て〉
Top
・メレンゲ
・きいちごとライチのジェラート
・ばらの花びら、タイム、クレソン、菜の花
・パイ生地の上に、柚子胡椒と竹炭のマカロン、抹茶のメレンゲ、さくらんぼ、ブルーベリー、ラズベリー
Middle
・ほうじ茶クリーム
・さくらんぼ
・グレープフルーツのジュレ
・レモン寒天
・ほうじ茶のパンナコッタ
・アールグレイのスポンジ
・チョコレート
Bottom
・セルフィーユ
・アメリカンチェリーのコンポート、さくらんぼジュース
店舗詳細
住所、電話/非公開
営業時間/11:00〜12:30、13:00〜14:30、15:00〜16:30、17:00〜18:30の4部制。
6月の営業日/9、10、11、16、17、18日。テーマはさくらんぼ。
完全予約制。予約はインスタグラムより抽選。
料金/コースは¥12,000〜。
Instagram/@nami.zaimokuza
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
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- PHOTO :
- sono(mame)
- EDIT&WRITING :
- 松田亜子、安村 徹(Precious)