手土産は、時に言葉以上に思いを伝えてくれるコミュニケーションツール。取引先で、職場で、感謝や誠意を込めて。相手を思うセレクトが導くのは信頼とご縁。

雑誌『Precious』3月号では、【NEW BOSSの「手土産」図録】と題し、老舗の名品から注目のパティスリーまで、キャリアを重ねたNEW BOSSが経験に裏打ちされた審美眼で選ぶ、間違いのないセレクトをお届けしました。

今回は、小説家・山内マリコさんに伺った「手土産上手な人」と、「ロエベ」の期間限定チョコレートをご紹介します。

山内マリコさん
小説家
(Mariko Yamauchi)1980年富山県生まれ、小説家。2012年に『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎)でデビュー。地方と女性を主なテーマに、映画化もされた『あのこは貴族』や『一心同体だった』(共に集英社)が共感を集める。近著は上野千鶴子との共著『地方女子たちの選択』(桂書房)、着物雑誌『七緒』の対談連載をまとめた『きもの、どう着てる? 私の「スタイル」探訪記』(プレジデント社)など。

ロエベ『ロエベ×スナ・フジタ チョコレート ボンボン』

パリの食通が通う「Atelier Pages(アトリエ パージュ)」手島竜司シェフ監修のチョコレートボンボン。すべてにスペインの食材やフレーバーを使用し、ひまわりの種のプラリネ、サングリアなど、ひと口ごとに新たな表情を見せる洗練された味わいに、ロエベらしいクラフツマンシップが宿る。スナ・フジタの春を寿ぐようなパッケージは、新たな関係の始まりも予感させる。3月14日まで、カサロエベ銀座で限定販売。通販なし。

手土産_1
「ロエベ×スナ・フジタ チョコレート ボンボン」¥11,000・ニット¥214,500(ロエベ ジャパン)

手土産上手な人を、すべからく尊敬する者より──文・山内マリコ

仕事柄、手土産をいただくことが多い。打ち合わせや取材などで人と会うときは、まあまあの頻度でなにかしら頂戴して帰ることになる。人と会う予定が続くと、いただき物のお菓子がリビングで渋滞を起こすことも。チョコレートの箱が小さなタワーを作っていたりする。

にもかかわらず、私の手土産への感度は鈍い。もらう専門なので、基本姿勢が受け身。なので、相手がずっと手に持っていた小ぶりな紙袋を、よもや自分がもらえるものとは、最後の最後まで気づかない。

打ち合わせや取材も終盤になり、もうそろそろお別れという時間になって、相手がずっと椅子に置いていた紙袋を、こちらにスッと差し出す。

「あの、これよかったら」
「えええっ!? いいんですか!? 」

私の驚きようときたら……。

あれだけしょっちゅう手土産をいただいておきながら、本当に毎回、うまくだまされてしまう。いや、「だまされる」は違うか?

とにかく毎度、私は驚く。相手は決してサプライズ・プレゼントのつもりで用意しているわけではないのに。だって彼らはその時が来るまで、まるで手土産など存在しないかのように振る舞うのだ。寝首をかくように差し出す。忍者感がある。

みんないつどんな感じで、手土産を選ぶ・渡す訓練を受けたのだろう。社員研修のときマナー講師からレクチャーを受けるのか。それとも先輩から実地で教わるのか。就職経験がないので本当にわからない。ともあれ手土産スキルは実際、すごく大事だ。

音楽関係の仕事をしている知人が、若手のミュージシャンを「彼は毎回ちゃんと手土産を持ってくるんだ」と好意的に評しているのを聞いて、へぇ~と思ったことがある。合理的で、そういう日本的な細かいことは気にしないタイプに思えた人物も、手土産には相好を崩すらしい。それから知人は、意地悪い目を光らせて軽口を叩いた。

「山内さんはなにも持ってきたことないけどね!」

そう、私はいつも手ぶらだ。もらうたびに驚いているくらいなので、差し上げるなんて芸当、とてもとても。まったく気が利かない、稀代の手土産下手である。

なので人が手土産でミスっていると、ものすごく親近感を抱く。

数年前に編集さんと二人で、とある人物に小説の取材をさせてもらったときのこと。帰る相手を見送ったあと、編集さんが用意していた紙袋が、椅子にぽつんと取り残されていた。気づいた彼女はあわてて渡しに走ったが、時すでに遅しで手土産だけが残された。うっかり渡し忘れている姿を見て「同志発見!」と、その編集さんのことがもっと好きになった。

「あの、よかったら山内さんどうぞ」

との申し出をありがたく受けて、持って帰った水饅頭の美う味まさ。葛粉のぷるぷるした食感と、こしあんの上品な甘み。たいがいの手土産は、誰になにをもらったか忘れてしまうけれど、このときの水饅頭の味は、やたら記憶に残っている。


※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

ロエベ ジャパン クライアントサービス

TEL:03-6215-6116

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