手土産は、時に言葉以上に思いを伝えてくれるコミュニケーションツール。取引先で、職場で、感謝や誠意を込めて。相手を思うセレクトが導くのは信頼とご縁。
雑誌『Precious』3月号では、【NEW BOSSの「手土産」図録】と題し、老舗の名品から注目のパティスリーまで、キャリアを重ねたNEW BOSSが経験に裏打ちされた審美眼で選ぶ、間違いのないセレクトをお届けしました。
今回は、小説家・山内マリコさんに伺った「手土産上手な人」と、「ロエベ」の期間限定チョコレートをご紹介します。
ロエベ『ロエベ×スナ・フジタ チョコレート ボンボン』
パリの食通が通う「Atelier Pages(アトリエ パージュ)」手島竜司シェフ監修のチョコレートボンボン。すべてにスペインの食材やフレーバーを使用し、ひまわりの種のプラリネ、サングリアなど、ひと口ごとに新たな表情を見せる洗練された味わいに、ロエベらしいクラフツマンシップが宿る。スナ・フジタの春を寿ぐようなパッケージは、新たな関係の始まりも予感させる。3月14日まで、カサロエベ銀座で限定販売。通販なし。
手土産上手な人を、すべからく尊敬する者より──文・山内マリコ
仕事柄、手土産をいただくことが多い。打ち合わせや取材などで人と会うときは、まあまあの頻度でなにかしら頂戴して帰ることになる。人と会う予定が続くと、いただき物のお菓子がリビングで渋滞を起こすことも。チョコレートの箱が小さなタワーを作っていたりする。
にもかかわらず、私の手土産への感度は鈍い。もらう専門なので、基本姿勢が受け身。なので、相手がずっと手に持っていた小ぶりな紙袋を、よもや自分がもらえるものとは、最後の最後まで気づかない。
打ち合わせや取材も終盤になり、もうそろそろお別れという時間になって、相手がずっと椅子に置いていた紙袋を、こちらにスッと差し出す。
「あの、これよかったら」
「えええっ!? いいんですか!? 」
私の驚きようときたら……。
あれだけしょっちゅう手土産をいただいておきながら、本当に毎回、うまくだまされてしまう。いや、「だまされる」は違うか?
とにかく毎度、私は驚く。相手は決してサプライズ・プレゼントのつもりで用意しているわけではないのに。だって彼らはその時が来るまで、まるで手土産など存在しないかのように振る舞うのだ。寝首をかくように差し出す。忍者感がある。
みんないつどんな感じで、手土産を選ぶ・渡す訓練を受けたのだろう。社員研修のときマナー講師からレクチャーを受けるのか。それとも先輩から実地で教わるのか。就職経験がないので本当にわからない。ともあれ手土産スキルは実際、すごく大事だ。
音楽関係の仕事をしている知人が、若手のミュージシャンを「彼は毎回ちゃんと手土産を持ってくるんだ」と好意的に評しているのを聞いて、へぇ~と思ったことがある。合理的で、そういう日本的な細かいことは気にしないタイプに思えた人物も、手土産には相好を崩すらしい。それから知人は、意地悪い目を光らせて軽口を叩いた。
「山内さんはなにも持ってきたことないけどね!」
そう、私はいつも手ぶらだ。もらうたびに驚いているくらいなので、差し上げるなんて芸当、とてもとても。まったく気が利かない、稀代の手土産下手である。
なので人が手土産でミスっていると、ものすごく親近感を抱く。
数年前に編集さんと二人で、とある人物に小説の取材をさせてもらったときのこと。帰る相手を見送ったあと、編集さんが用意していた紙袋が、椅子にぽつんと取り残されていた。気づいた彼女はあわてて渡しに走ったが、時すでに遅しで手土産だけが残された。うっかり渡し忘れている姿を見て「同志発見!」と、その編集さんのことがもっと好きになった。
「あの、よかったら山内さんどうぞ」
との申し出をありがたく受けて、持って帰った水饅頭の美う味まさ。葛粉のぷるぷるした食感と、こしあんの上品な甘み。たいがいの手土産は、誰になにをもらったか忘れてしまうけれど、このときの水饅頭の味は、やたら記憶に残っている。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
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- 望月律子(KIND/人物)、洲脇佑美(静物)
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- EDIT :
- 松田亜子

















