現行モデルの先代に当たるフィアット『500』が世に出たのは1957年のことだが、当時それは「ヌォーヴァ・チンクエチェント」、つまり「新型500」と呼ばれていた。実はそれは2代目で、さらに旧い初代『500』が戦前に登場していたからだ。

イタリアを埋め尽くしたフィアットの2代目『500』

デザインに手を抜かないコンパクトカー

’60年代に、ヨーロッパ中で爆発的にヒットしたフィアットの『500』は、なんと、空冷の2気筒! 屋根つきバイクのような存在だが、第二次大戦後のヨーロッパの生活スタイルを一変させる、自動車史を塗り変える一大発明品となったのだ。惜しまれながら’75年に生産が終了。全長2970×全幅1320×全高1340㎜ ●’68年式 ※参考品

フィアットはイタリア最大の自動車メーカーで、『500』はそのなかで最小のクルマである。だからそのコンセプトは、小さいながら4人乗れるミニマルなクルマ、という明快なものだった。となるとルックスなど二の次、となりそうだが、そうはならないのがデザインの国、イタリアである。

  • 【Window】
    ’60年代の車に多く見られた、運転席と助手席の脇に設けられた風取り込み用の三角窓。ヴィンテージカーの古きよきディテールだ。
  • 【Roof】
    ‘シトロエン’『2CV』や‘フィアット’の『パンダ』にも採用されたキャンバストップは、狭小な車内に開放感をもたらす画期的なアイディア。

     
  • 【Handle】
    フロントガラスを通して見ても、小さな車体に対して今より若干大きく感じられるステアリング。にぎった感じも、実にしなやか。

当時の小型車に多かったリアエンジン後輪駆動を採用した2代目『500』は、フィアットの主任技術者ダンテ・ジアコーザが設計したもので、非力ながら運転の愉しいクルマだったと同時に、ボディデザインが魅力的だったのも人々の心を摑んだ。だから1975年に生産を終えるまでに400万台以上が生み出されて、イタリア中の道という道を埋め尽くした。

’70年代、’80年代はもちろん’90年代になっても、イタリアを訪れると、人々の暮らしに寄り添っている『500』の姿を必ず目にしたものだ。小さなフィアット『500』は、イタリア人の生活に密着したペットのような存在なのだった。

機構はまるで異なるものの、2代目のスタイルを受け継いだ現行『500』も、イタリアの景色の一部になりつつある。

※2011年夏号取材時の情報です。

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