現行モデルの先代に当たるフィアット『500』が世に出たのは1957年のことだが、当時それは「ヌォーヴァ・チンクエチェント」、つまり「新型500」と呼ばれていた。実はそれは2代目で、さらに旧い初代『500』が戦前に登場していたからだ。
イタリアを埋め尽くしたフィアットの2代目『500』
デザインに手を抜かないコンパクトカー
フィアットはイタリア最大の自動車メーカーで、『500』はそのなかで最小のクルマである。だからそのコンセプトは、小さいながら4人乗れるミニマルなクルマ、という明快なものだった。となるとルックスなど二の次、となりそうだが、そうはならないのがデザインの国、イタリアである。
当時の小型車に多かったリアエンジン後輪駆動を採用した2代目『500』は、フィアットの主任技術者ダンテ・ジアコーザが設計したもので、非力ながら運転の愉しいクルマだったと同時に、ボディデザインが魅力的だったのも人々の心を摑んだ。だから1975年に生産を終えるまでに400万台以上が生み出されて、イタリア中の道という道を埋め尽くした。
’70年代、’80年代はもちろん’90年代になっても、イタリアを訪れると、人々の暮らしに寄り添っている『500』の姿を必ず目にしたものだ。小さなフィアット『500』は、イタリア人の生活に密着したペットのような存在なのだった。
機構はまるで異なるものの、2代目のスタイルを受け継いだ現行『500』も、イタリアの景色の一部になりつつある。
※2011年夏号取材時の情報です。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
Faceboook へのリンク
Twitter へのリンク