現在のような背広型のスーツが、イギリスで誕生してからおよそ150年を経た。この150年の間、往年の紳士たちが身につけてきたスーツは、いかにも男らしく格好よさが際立っていた。体になじんだスーツの美しいドレープ感、基本と遊びをVゾーンで楽しむ正統性と洒脱感、場をわきまえた着こなしの妙味……。今スーツ離れといわれていても、男のお洒落の根本は、やはりスーツをしっかりと着ることにある。

歴代名士たちが着こなしたストイックで完璧なスーツスタイル!

世界の男たちの心をつかんだ、偉大なスタイルの伝道師

ウィンザー公/右の人物。1894~1972年。1936年に即位して英国王エドワード8世となるが同年退位し、ウィンザー公爵となる。グレーフランネルのスーツに茶のスエードの靴を合わせる着こなしや、ドレッシーなスーツにベレー帽をかぶるなど、新しい発想を注ぎ込んだ、ダンディの頂点! 写真:Getty Images
ウィンザー公/右の人物。1894~1972年。1936年に即位して英国王エドワード8世となるが同年退位し、ウィンザー公爵となる。グレーフランネルのスーツに茶のスエードの靴を合わせる着こなしや、ドレッシーなスーツにベレー帽をかぶるなど、新しい発想を注ぎ込んだ、ダンディの頂点! 写真:Getty Images

男のスタイルを牽引してきた第一人者は、間違いなくウィンザー公である。プリンス・オブ・ウェールズ時代、年齢が25〜37歳の間に、いわばファッションの英国親善大使としても世界を飛び回り、持ち前のスーツスタイルを披露。ロンドンのサヴィル・ロウの凄腕テーラー「ショルテ」や「ジェームズ&ジェームズ」で仕立てた、スリーピースやダブルのスーツを完璧に着こなしていた。

完璧なスタイルでアメリカを席巻したお洒落アイコン

フレッド・アステア/1899~1987年。ハリウッドの大スターにして、一流のダンサー。仕立てたばかりのスーツをやわらかくするために、壁に投げつけていたという逸話も残る、当代きっての洒落者。ダンスのシーンでも、一糸乱れないスーツスタイルは圧巻。英国の気品あるスーツが好み。写真:Getty Images
フレッド・アステア/1899~1987年。ハリウッドの大スターにして、一流のダンサー。仕立てたばかりのスーツをやわらかくするために、壁に投げつけていたという逸話も残る、当代きっての洒落者。ダンスのシーンでも、一糸乱れないスーツスタイルは圧巻。英国の気品あるスーツが好み。写真:Getty Images

そんなウィンザー公のファッションに多大な影響を受けたのが、超一流ダンサーのフレッド・アステアだ。ウィンザー公に憧れ、やがて英国譲りのスタイルが完成していった。

フランス流の色気を放つエレガンスの代弁者

ジャン=ポール・ベルモンド/1933年~。俳優。1959年の映画『勝手にしやがれ』でヌーヴェルヴァーグの旗手となる。ソフト帽をかぶった洒脱なジャケット姿はつとに有名だが、ラテンのにおいが立ちこめた、大きなラペルのダブルスーツをなんとも色っぽく着こなす、フランス映画を代表する洒落者。写真:Getty Images
ジャン=ポール・ベルモンド/1933年~。俳優。1959年の映画『勝手にしやがれ』でヌーヴェルヴァーグの旗手となる。ソフト帽をかぶった洒脱なジャケット姿はつとに有名だが、ラテンのにおいが立ちこめた、大きなラペルのダブルスーツをなんとも色っぽく着こなす、フランス映画を代表する洒落者。写真:Getty Images

ここでもう一度、一流の紳士たちの写真を見てほしい。なんと格好いい姿だろう! 時代を超えた普遍的な男の美学、正統かつ強烈なダンディズム……。お洒落なスーツを極めることなくして、真の男のスタイルは完成しない。

男のロマンを超一流の仕事と服で示した稀代の英雄

ウィンストン・チャーチル/1874~1965年。20世紀で最も偉大なリーダー。母国イギリスのスーツだけでなく、ナポリのしなやかなスーツも愛した、どこまでもスーツを追求する着道楽。スリーピースでもダブルのスーツでも、ポルカドットの蝶タイを必ず合わせるという、着こなしの哲学を貫いた。 写真:Getty Images
ウィンストン・チャーチル/1874~1965年。20世紀で最も偉大なリーダー。母国イギリスのスーツだけでなく、ナポリのしなやかなスーツも愛した、どこまでもスーツを追求する着道楽。スリーピースでもダブルのスーツでも、ポルカドットの蝶タイを必ず合わせるという、着こなしの哲学を貫いた。 写真:Getty Images

※2012年秋号取材時の情報です。

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名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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