サスペンダー(イギリスではブレイシーズ)といえば、バブル全盛期を代表する映画「ウォール街」(1987)で、主演の強欲な金融エリートを演じたマイケル・ダグラスを思い出す。「アラン・フラッサー」のサスペンダーとスーツは、主人公ゲッコーの野心を包み込む服として鮮烈な印象を与えたから、サスペンダースタイルのイメージもかなりの影響を受け、お金持ちの象徴のようなコーデとして認識されることとなった。

しかしながら、およそ200年前から英国紳士御用達だったスーツの必須アイテム、ブレイシーズ(アメリカではサスペンダー)は本来、イギリスのクラシックなスタイルに欠かせないものだ。現在では、従来の伝統的なデザインから進化し現代のスーツスタイルにも映える存在となった。ウォールストリートスタイルならぬ、モダンなブリティッシュスタイルを完成させるためにも、押さえておきたい必須アイテムなのである。

胴回りに合うベルトがないから使う、というような消極的な理由ではなく、英国ファッションを楽しむためのサスペンダー(ブレイシーズ)だから、体型には関係ない。クラシックなスタイルを指向するなら、トライしてみて損はないのである。

ブレイシーズのクラシックさを愛でる

 人間、なぜか新しいものばかりに囲まれていると疲れてしまう。身体も古い部分と生まれ変わっていく部分がうまく共存してできている。そのバランスが大事なのだろう。
 約200年前からスーツに欠かせないアクセサリーとして、英国紳士御用達だったサスペンダーなどは、何もかもミニマイズされた現代のスーツスタイルに加えるにちょうどよいクラシック・スパイスだ。普通のベルトよりしっかり固定されるから立っても座ってもパンツのラインが乱れないのが何よりうれしい。

紳士なサスペンダーにもTPOを適用せよ

左から/黒のシルク製はフォーマル用。¥68,000(ブリオーニ ジャパン)白レザーをあしらった夏用。¥15,000(ハケット ロンドン 銀座) 小紋柄が英国的な秋冬用。¥14,000(伊勢丹新宿店〈アルバート サーストン〉) ピンチタイプはカジュアル用。¥15,000(タイ ユア タイ 青山)

クラシックな英国スタイルは、サスペンダーがあってこそだ。 ジャケットを脱ぐ楽しみを味わえるのも魅力のひとつ。是非ともサスペンダースタイルを実践していただきたい。

※価格すべて税抜です。※価格は2016年春号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
林 信朗 服飾評論家
BY :
MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任し、フリーの服飾評論家に。ダンディズムを地で行くセンスと、博覧強記ぶりは業界でも随一。
クレジット :
イラスト/緒方 環 撮影/熊澤 透(人物)、川田有二(人物)、篠原宏明(取材)、戸田嘉昭・唐澤光也・小池紀行(パイルドライバー/静物)、小林考至(静物) スタイリスト/櫻井賢之、大西陽一(RESPECT)、村上忠正、武内雅英(code)、石川英治(tablerockstudio)、齊藤知宏 ヘア&メーク/MASAYUKI(the VOICE)、YOBOON(coccina) モデル/Yaron、Trayko、Alban レイアウト/澤田 翔(H.D.O.) 文/林 信朗 構成/矢部克已(UFFIZI MEDIA)、鷲尾顕司、高橋 大(atelier vie)、菅原幸裕、堀 けいこ、櫻井 香、山下英介(本誌) 撮影協力/銀座もとじ、マルキシ