猛暑が続く日本の夏、あなたは1日に何回着替えているだろうか。汗臭かったりするのは言語道断、オフィスでは上着を脱いでいても、来客があればさっと羽織って、エレガントにふるまう。そんなことが当たり前になっている仕事のできるビジネスマンほど、服装には気を遣うものだ。それは、服装を替えて様々な人と相対することが、礼儀そのものだからだ。
朝はグレー×白の上品配色で朝のアクティブスタイルを。日中のビジネスアワーは貫禄のスリーピーススーツで過ごし、夜の会食には艶やかなジャケットスタイルで。自宅で寛ぐひとときにも美意識を満たすウエアで1日を終える。男にはそういう面倒な贅沢も必要だ。
着替えを苦とせず
ロバート・アルトマン監督の映画『ゴスフォード・パーク』は、貴族の生活の裏側を、使用人の日常を描くことで暴くという趣向が大変にオモシロイ作品だ。これを観るとわかるのだが、貴族の生活というのはまさに着替えの連続なのである。
朝起きたら朝食のために着替える。続いて散歩や狐狩りのために着替え、昼食用に着替える。夜は客を招いての晩餐会だから当然ホワイトタイだ。館には男子貴族のためにヴァレー(ヴァレー・パーキングのヴァレーはここからきている)がいて、その着替えを準備し、着付けを手伝う。女性にはメイドがつく。
アイビールックの元祖「VAN」の創業者石津謙介氏はTPO(タイム、プレイス、オケイジョン)という言葉を創作し、広めたが、まさに貴族の生活というのはTPOに応じた着替えに象徴される「礼儀合戦」なのである。
職住が離れていることが多い日本の男性にとって、一日何度もの着替えは実際上難しい。しかし、プレスの効いたフレッシュな服装こそが紳士を紳士たらしめるルールの最上位であることだけは覚えておいていただきたい。
グレー×白の上品配色で朝のアクティブスタイルを完成
早朝に目覚め、一日の始まりを散歩やジョギングでスタートする東京ジェントルマン。まずはコンフォタブルなウエアに身を包む。「ブルネロ クチネリ」のグレーは格別に上品だが、襟裏にフードが収納されたナイロンのベストでもそれは変わらない。白のクルーネックT、スエットのショーツ。こんなアクティブな着こなしでも、すみずみまで上質さが行き渡る。
日中のビジネスアワーは貫禄のスリーピーススーツで過ごす
スーツに着替え、仕事に臨む気持ちへと切り替える。厚いパッドのショルダーやチェンジポケットが英国調を主張し、襟付きのベストが品格を醸し出す。Vゾーンやチーフは春らしい色使いを意識したい。
夜の会食にふさわしい艶やかなジャケットスタイル
自宅に戻り着替えてから会食へと繰り出す、東京ジェントルマン。正統派のブルージャケットはカシミアシルク生地で、滑らかさや艶やかさが格別。爽やかでありながら、色気も充満する。シャンブレーのシャツでほどよくドレスダウンし、タイやチーフはブルー系で統一したい。
自宅で寛ぐひとときにも美意識を満たすウエアが必要
会食先から自宅に戻ったら、シャワーを浴びてパジャマに着替える。今季のトレンド、デニム調のセットアップは素材がコットンリネンで、ドライなタッチが素肌に心地いい。上着はポケットのみ生地を横使いにしているのがユニーク。ブラウンのパイピングもていねいな仕事ぶり。
仕事ができるビジネスマンほど、1日4回の着替えを苦も無く行えるものだ。ここでは東京ジェントルマンのルールとして紹介したが、ここに、あなたなりのルールをアレンジして加えてみるのもいいだろう。
※価格はすべて税込です。※価格は2016年春号掲載時の情報です。
- TEXT :
- 林 信朗 服飾評論家
- BY :
- MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
- クレジット :
- 撮影/川田有二 スタイリスト/村上忠正 ヘア&メーク/MASAYUKI (the VOICE)モデル/Yaron