大型の野生牛に由来する車名を与えられて登場したランボルギーニのSUV、ウルス。スーパーカーの代表格であるブランドからのリリースともなれば、パフォーマンスはもとより、クルマとしての演出が気になるところ。過去にもランボルギーニには、アメリカ軍向けのプロトタイプ「チーター」から発展し、あのカウンタックから譲り受けたV型12気筒エンジンを搭載したオフロード4WD「LM002」を発売したこともあるだけに、期待が高まるばかり。その出来栄えを自動車ライターの佐藤篤司氏がリポートする。

始動は拍子抜けするほど穏やか

エアサスを装着し、クリアランスは158〜248㎜の間で変化する。
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バンパー下部には整流板を装着。4本出しのマフラーが格好いい。

 冷静に考えれば、いまSUVに求められるのは超弩級スポーツのそれではなく、ごくごく普通に使える実用性。それがたとえランボルギーニでも、そこから大きく外れる商品企画はしないだろう。そんな気持ちを抱きながらウルスと対峙した。

 さすがに地面に突き刺さるようなアヴェンタドールとかウラカンのようなプロポーションではないが、かといってスペースを優先したコロッとした、押し出し感の強いSUVのフォルムではない。いわゆるクーペとSUVのクロスオーバーという部類に入り、フロントマスクのデザインやエッジの効いたフェンダー周りがインパクト抜群である。ひと目でそれと理解できるデザイン力、それこそがランボルギーニなのだ。

 室内に移ろう。目に入るコックピットのデザインはランボルギーニの公式に従ったものであり、ウラカンと同じような赤い蓋を跳ね上げてプッシュする始動スイッチもあるし、パドルシフトで操作するギアの操作方法もしかり。ただし、後ろを振り向くとリアシートがある。普通のクルマなら当たり前のことだが、このブランドでリアシート付きは特別なのだ。

 エンジンの始動は拍子抜けするほどスマートだ。咆吼などという表現はまったく当てはまらず、何とも穏やか。ランボルギーニだからといって、どこでも高周波のエンジンを響かせて走り回る必要はないし、むしろそうしたイメージはウルスにとって不要なのかもしれない。

乗りやすくてどう猛!

外観同様、六角形をモチーフにしたデザイン。「例の」ミサイル発射ボタンみたいなイグニッションスイッチも付いている。
テスト車両のリアシートは2人掛け。標準では3人掛けだ。
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その気持ちは走り出してからもしばらく変わることはなかった。乗り心地は実にしっとりとして快適そのもの。斜め後方の視界が厳しいとことを除けば、市街地走行で不快感はない。4輪を操舵する4WSシステムは低速で逆位相(前輪と逆の向きに後輪が曲がる)制御となるのだが、これが小回り性を向上させているため、2メートル強の車幅もそれほど気にせず、軽やかに扱えるのだ。そのラクさ加減に「天下のランボルギーニが、これでいいのか」と、心配してしまうほど、乗り心地や実用性は洗練されていた。

だが、やっぱりというか、普通で終わるわけはなかった。なにしろ4リッターのV型8気筒ツインターボエンジンは650馬力を発生し、0~100km/hの加速は3.6秒、最高速305km/hをうたうクルマだ。高速道路に入り、本戦への合流でアクセルを踏み込むと、それまでのしとやかさから激変。SUVとは思えない凄まじい速さを披露し始めた。もしこれがウラカンなどと同じように車重が1.5トンほどだったら(ウルスは2.3トン強)、果たしてどんなことになっていたか……。

 素晴らしい走行性能を堪能しているうちに、心と体が慣れてきた。コクピットは少しタイトだが、そのフィット感はむしろ快適性を実現するための必然。ボディ剛性も高いうえにサスペンションは実にしなやかに路面をトレースしていく。何回か路面の繋ぎ目など少し大きめの衝撃を受けたときにこそ、タイヤの重さというか、ばね下のドンという衝撃は感じるものの、それは許容範囲である。

最近、女性ファッション誌でウルスを取り上げるという話を聞いた。クルマ好きの女性のための企画ではなく、あくまでもセレブリティ向けのファッションアイテムのひとつとして捉えての企画だそうだ。しっかりと調教された、誰もが乗れる猛牛(普通乗るのは馬だが)というウルスの属性に反応しているのは、むしろクルマに馴染みのない人たちかもしれない。

スチール撮影/篠原晃一 動画制作/永田忠彦(Quarter Photography)

<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ全長×全幅×全高:5,112×2,016×1,638㎜
車重:2,360kg
駆動方式:4WD
エンジン:3,996cc V型8気筒 DOHC ツインターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:478kW(650PS)/6,000rpm
最大トルク:850Nm/2,250~4,500rpm
2779.92万円(ウルス)

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この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
PHOTO :
永田忠彦(Quarter Photography)
MOVIE :
永田忠彦(Quarter Photography)