お洒落は足元から、というのはご存じの向きも多いだろう。靴の種類や手入れの様子を見ればその人の社会的地位はもちろん、性格やマナーまでもある程度言い当てられるほど、靴は口ほどにものを言う。

その靴と同様にものを言うのが、帽子である。洋装においては、本来帽子は紳士のマストアイテム。1950年代頃までの紳士は、誰もがきちんと帽子を頭に乗せていた。文字通り、頭の先からつま先まで、揺るぎない服装のルールがあったのだ。

まずは、ジェントルマンが選ぶべき帽子のスタイルから紹介しよう。1676年に創業した、世界最古の帽子店「ジェームス・ロック」。イギリスの元首相ウィンストン・チャーチルも贔屓にしていた、由緒正しき店の名品で、使われている素材がやわらかく様々なアレンジができるので、着こなしを選ばない。

¥36,000(ヴァルカナイズ・ロンドン〈ジェームス・ロック〉)※価格は税抜です。※価格は2016年春号掲載時の情報です。

 帽子の一大ブームである。けっこうなことである。このかぶりもののおかげで、ジェントルマンはますます小僧にはまねできない大人の礼儀を実践できるからである。

ある時期から、この習慣は消え失せたかに見えたのだが、現在の日本では、おしゃれに積極的な男性たちを中心に帽子が好んでかぶられている。かつてのマストアイテムが復活しているるのは歓迎すべきことだ。だが、帽子のマナーも共に復活しなかったように見えるのが、悔やまれる。 

基本のかまえを申せば、帽子は屋外用のものである。屋内では脱ぐのである(が、女性には適用されない。ご存じ?)。だが、何を持って屋内と定義するか、これには若干の思慮がいる。

少なくとも、飲食店やバーで着帽のまま飲食するのは明確なマナー違反だ。誰もが帽子をかぶっていた時代は、たいていの店に帽子掛けがあった。現在でも外套をかけるフックがふたつに枝分かれしていて、帽子掛けとして使われている店も存在する。

とはいえ、実際のところは、そういう店ばかりではないので、置き場所のない帽子が頭の上に乗り続けるのはわからないでもないのだが・・・、残念ながら、脱がずば似非ジェントルマン認定されてしまうのでご注意を。

念のため、車のなかや、通勤電車のなかでは脱ぐ必要はない。あの空間は屋外とみなされるからだ。
 1950年代以前の英米仏の映画を教師として雇うことをおすすめしたい。

世界中の紳士が愛用、世界最古の帽子店

 1676年創業の世界最古の帽子店。ロンドンのセントジェームスに今でも店を構え、もちろん王室御用達。チャーチル元首相やジョン・レノンなどそうそうたる人物が顧客であったが、映画界でいちばん有名なのが、名優チャーリー・チャップリン。同店発案のハードなボーラーハットを世界中の紳士が愛用、世界最古の帽子店はまさに彼のトレードマーク。この帽子はトップハットに続く、フォーマルなハット。それを喜劇に使ってしまう辺りにセンスを感じる。これはウサギの毛を使った同社らしい出来映えだが、ソフトでつばも広めにつくられているので、気どらずかぶることができる。

モデル名は『チェルシー』。ソフトなつくりで、つばも広め。ハット¥37,800(ヴァルカナイズ・ロンドン〈ジェームス・ロック〉)※参考価格

クラシックなスタイルも帽子ひとつでモードに変化する。帽子デビューを考えているなら、まずは「ジェームス・ロック」のソフトハットを選んでみてはいかがだろうか。世界最古の帽子だが敷居は意外と高くない。’60年代を想像しながらコーディネート。ダークカラーでまとめれば、クールなスタイルになること間違いなし!

この記事の執筆者
TEXT :
MEN'S Precious編集部 
BY :
MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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クレジット :
撮影/唐澤光也(パイルドライバー/静物)