故・伊丹十三は、著作のなかで、配偶者に求める条件のひとつとして、楽器が弾けることを挙げていた。数ある演奏道具のうち、最も刺激的・情熱的なものといえば、エレクトリックギターをおいてほかにない。近代音楽の、ロックの歴史を変えた名品の魅力に迫る。
実は楽器もけっこうやれる
作家/映画監督の伊丹十三は、男性必読の名著『女たちよ!』の後書きの中で、自分が求める配偶者の条件を23挙げている。その中に、「巧みに楽器を奏する(ただし、ハーモニカ、ウクレレ、マンドリンは除外す)」という一条がある。
楽器を自ら演奏することで音楽と、その生まれてきた文化に通暁してほしいという彼の知的願望からだろうか。あるいは、それによる社交的メリットも計算してか。
いや、待てよ。観察巧者伊丹のことだ、女も男も人間は楽器を奏でるとき最もセクシーな表情を垣間見せるということを気がついていたのか。だからだ!
数々の名演を生んだ伝説のエレキ
ギタリスト、レス・ポールと共同開発したギブソン社のエレクトリックギター『レスポール』は、フェンダー社の『ストラトキャスター』と並んで、ソリッドギターの先駆けであり、ポピュラーミュージックの歩みに重要な役割を果たした。
レス・ポールは、近代ギタープレイのパイオニアとして、そして“ギブソンのエレクトリックギター『レス・ポール』の生みの親として、その後に多大な影響を与えた。わけても『レス・ポール』は、ロックを体現するギターとして今日なお世界的大人気を誇る。
その始まりは1960年代後半にエリック・クラプトンがブルーズを基にしたヘヴィなロックを『レス・ポール』で奏でたことだといわれている。以降、クラプトンとともに英国三大ギタリストと呼ばれるジェフ・ベックとジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)、さらにはロック史に君臨する名ギタリストたち―ポール・コゾフ(フリー)、キース・リチャーズとミック・テイラー(ザ・ローリング・ストーンズ)、ロバート・フリップ(キング・クリムゾン)、そしてデュアン・オールマンとディッキー・ベッツ(オールマン・ブラザーズ・バンド)らが『レス・ポール』を手に、次々と新しいロックを誕生させた。
すなわち『レス・ポール』はロックン・ロールをロックに変えた。レス・ポールはロックの、音楽の歴史の、まさに伝説なのだ。最高の音色を奏でる逸品を手にした貴方は、どんな表情を浮かべるのだろう。そして、傍にその様子を見つめる淑女がいたら……。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2016年春号『東京ジェントルマン50の極意』より
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- クレジット :
- 撮影/戸田嘉昭(パイルドライバー/静物)