純喫茶がカラオケスナックになった理由は?
客のカラオケに小気味よく合いの手を入れるだけでなく、自身の美声も披露するマスターの奥平氏に『アンデルセン』の歴史を尋ねた。
「この店は45年ほど前に純喫茶として始まったんだけど、お客さんにカラオケ好きな人が多くてカラオケ道場になったの。ほら、壁にもカラオケ有段者の名札があるでしょう」
カラオケ道場の流れでカラオケスナックとなり、現在の昼は喫茶店、夜はカラオケスナックとしての営業スタイルになったという。長く続く店には、その店を愛する常連がいる。実は奥平氏ももともと常連で、2代目マスターになったのだという。
「この店の雰囲気が好きで、残したいと思ってね。だから内装もオープン当時からほとんど変えていません。ガタはきているけれど、昭和っぽくってそれもいいでしょう」
常連は、この近所の会社で働いていた頃から定年した今も30年ほど通う者も、80歳近いお姉さんもいる。そう聞くと、年齢層は高めかと思いきや、若い人もしばし訪れるとう。
「若い人たちは自分たち世代の曲も、意外と昔の曲も歌ってくれる。僕は歌が好きだから、おもしろいね」
マスターのおかげで一見でも訪れやすい
あっという間に2時間が経とうとしている。冨樫さんにこの店はどうだったか、聞いてみた。
「常連さんが多い店ってコミュニティがあって、入りにくい雰囲気があるけれど『アンデルセン』はマスターがニコニコと盛り上げてくれるから、すんなりなじめました。人前で歌うのも久しぶりだけど、合いの手を入れてくれてうれしかった〜!」
冨樫さんが心地よくすごせたのも、奥平氏の店への情熱があるからこそ。
「僕はこの空間が好き。一人で来るお客さんもいるから、みんなが楽しく、盛り上がるようにしたいだけ。松田聖子を歌ってくれる世代の女性にも来てほしいですね」と奥平氏。
明朗会計で、初めてでもマスターがやさしく語りかけてくれる。仕事帰りの紳士で金曜には満席になることもあるというのも頷ける。人恋しく、カラオケを楽しみたい夜は『アンデルセン』が都会のオアシスとなるだろう。
【アンデルセン】
問い合わせ先
- アンデルセン TEL:03-3669-0886
- 住所:東京都中央区日本橋茅場町3-4−6
営業時間:18:00〜23:30(日中は10:30〜L.O.14:30で営業中)
定休日:土曜・日曜・祝日
メニュー:セット料金2時間税込3,000円(歌い放題、おつまみ2品、ウイスキー、焼酎、日本酒、カクテル、ソフトドリンク飲み放題/ビールのみ2本まで) 追加のおつまみ各500円、延長料金30分500円
- TEXT :
- 津島千佳 ライター・エディター