ジェームズ・ボンドの原作者であるイアン・フレミングは自身が英国きっての洒落者であった。そのため小説のなかにもボンドのファッションの美学はふんだんに描かれている。スーツは暗色かネイビー。シャツはシルクとシーアイランドコットン(海島綿)。ネクタイは黒のシルクの手編み。ハンカチは白のシルク。ひも靴は好まない。

ボンドは時代を超えたダンディ

スーツはチャコールグレーとネイビーと、そしてグレー

原作ではボンドのスーツは「黒っぽい服」や「濃紺」と書かれている。映画でもそれが踏襲され、初期3作ではスーツはチャコールグレーとネイビーと、そして南国では淡いグレーが着られている。アンソニー・シンクレアの仕立てたスーツはいずれも細身のサイドベンツで、ナローラペル、2ボタン。スラックスはベルトレスですそはシングルだ。こちらはそんな仕立てや生地、ディテールにいたるまでを忠実に現代に再現した一着である。
原作ではボンドのスーツは「黒っぽい服」や「濃紺」と書かれている。映画でもそれが踏襲され、初期3作ではスーツはチャコールグレーとネイビーと、そして南国では淡いグレーが着られている。アンソニー・シンクレアの仕立てたスーツはいずれも細身のサイドベンツで、ナローラペル、2ボタン。スラックスはベルトレスですそはシングルだ。こちらはそんな仕立てや生地、ディテールにいたるまでを忠実に現代に再現した一着である。

映画でもそんなボンドのファッションが貫かれている。そして、とりわけ原作に忠実だったのが、フレミングが存命であった時期につくられた初期の3作。そこには時代を超えた男のダンディズムが描かれているのだ。

ジェームズ・ボンドを実写化するのに、最も貢献したのが映画監督のテレンス・ヤングである。ヤングもまた広く知られる洒落者で、ヤングの博識と優雅さを当時の関係者たちは「彼自身がボンドだった」と証言する。

まずヤングはボンドのスーツを自分のテーラーであるアンソニー・シンクレアに仕立てさせた。映画第1作の『ドクター・ノオ』でボンドがスーツについて問われ「サヴィル・ロウ」と答えるシーンがあるが、シンクレアの店はサヴィル・ロウのほど近くのコンデュイット・ストリートにあった。

ドレスシャツは打ち込みのしっかりとした厚手の生地であるのが基本

初代ボンドであるショーン・コネリーの初期作では、ドレスシャツはすべて〝ターンブル&アッサー〟製。スーツにはターンナップカフのセミワイドカラーで、色は白とサックスブルーの2色のみ。ディナージャケットにボウタイの着こなしではダブルカフの白のセミワイドカラー。また南国のシーンなどでスーツの生地が薄手にされていても、ドレスシャツの生地は一貫して打ち込みのしっかりとした厚手の英国調であるのも特徴だ。
初代ボンドであるショーン・コネリーの初期作では、ドレスシャツはすべて〝ターンブル&アッサー〟製。スーツにはターンナップカフのセミワイドカラーで、色は白とサックスブルーの2色のみ。ディナージャケットにボウタイの着こなしではダブルカフの白のセミワイドカラー。また南国のシーンなどでスーツの生地が薄手にされていても、ドレスシャツの生地は一貫して打ち込みのしっかりとした厚手の英国調であるのも特徴だ。

シンクレアはボンドのスーツを「銃をしまうために少しゆったりめにしただけ」と述べている。そして「脱いで丸めても、踏んでも、着て眠っても、元に戻る」とも。初代のボンドに選ばれたショーン・コネリーは実際に仕立て上がったスーツを着てベッドで眠ってみたが、一晩経っても着心地や快適さがまったく変わらず驚いたという。

また劇中の激しいアクションでもボンドのスーツは常に体にフィットし乱れない。そうした美しさとタフさは、まさに丈夫な生地と縫製を持ち味とする英国仕立てならではのものだ。

ドレスシャツは英国王室御用達の老舗の“ターンブル&アッサー”が手がけた。特徴的なターンナップカフが選ばれたのは、「カフリンクスを使わずに楽に着たり脱いだりできるように」である。生地は肌の透けない、いかにも英国的なしっかりとした打ち込みのもの。台襟の低いセミワイドで、色は白とサックスブルー。ディナージャケットにボウタイの着こなしでは正式のダブルカフの白のドレスシャツが用意され、カフリンクスが使用された。

スーツの着こなしのポイントは、上着ポケットのフラップは中にしまい、スラックスのすそはシングル、というシティスタイルであること。ネクタイは黒のシングルノット。ポケットチーフは白のスクエア。それが初期3作品でのボンドスタイルの基本だ。

※2012年冬号取材時の情報です。
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