近現代美術史を代表する画家グスタフ・クリムト。19世紀末ウィーンで燦然と輝いた巨星の過去最多となる作品が集う「クリムト展 ウィーンと日本 1900」が東京都現代美術館で始まった。

『ユディトⅠ』『ベートーヴェン・フリーズ』など代表作が一堂にそろう!

恍惚の金の女性たち

クリムトの代表作『ユディトⅠ』。彼が初めて金箔を使用した油彩画という。ホロフェルネスの首をはね、手に持つヘブライ人の未亡人ユディトの恍惚とした表情は匂い立つ色香を放つ
クリムトの代表作『ユディトⅠ』。彼が初めて金箔を使用した油彩画という。ホロフェルネスの首をはね、手に持つヘブライ人の未亡人ユディトの恍惚とした表情は匂い立つ色香を放つ

 

右は『ヌーダ・ヴェリタス』。画像:朝日新聞社提供
右は『ヌーダ・ヴェリタス』。画像:朝日新聞社提供

クリムトと言えば金箔を用いた女性の作品イメージが強いだろう。『ユディトⅠ』や『ヌーダ・ヴェリタス』といった作品中の女性たちの表情は、見ているこちらがドキっとするほど官能に彩られている。

注目なのは、初来日となる女性の生涯を描いた『女の三世代』。金のみならずダークトーンの背景を持つこの作品は様々な解釈を考えさせる。クリムトの作品はあでやかであり華やかだが常に死の暗さも感じさせる。どこか危うさがあるのだ。その二面性に多くの人が魅了されるのだろう。

幼年、青年、老年で女の一生を描いた『女の三世代』。人物は華やかに彩られているが、背景となるくすんだ茶と黒が不安な情緒を駆り立てる
幼年、青年、老年で女の一生を描いた『女の三世代』。人物は華やかに彩られているが、背景となるくすんだ茶と黒が不安な情緒を駆り立てる

また、圧巻なのは大作曲家ベートーヴェンの傑作交響曲第9番の世界を表現した『ベートーヴェン・フリーズ』の精巧な原寸大レプリカ。この作品はウィーン造形芸術家教会を脱会して立ち上げたウィーン分離派を象徴する大傑作だ。「幸福への憧れ」(左壁)、「敵対する勢力」(中央)、「歓喜の歌」(右壁)の3面で構成される。本物は分離派ビルディング地下に展示されているが、上段に設置されており見にくい。今回の展示では人の背丈あたりに設置されており、レプリカではあるがその壮大な世界をより身近に鑑賞することができる。

『ベートーヴェン・フリーズ』中央の「敵対する勢力」。左3人のゴルゴンの娘、中央の悪魔など淫らかつ不穏なモチーフが描かれている
『ベートーヴェン・フリーズ』中央の「敵対する勢力」。左3人のゴルゴンの娘、中央の悪魔など淫らかつ不穏なモチーフが描かれている
忠実に再現された『ベートーヴェン・フリーズ』。全長34mに及ぶ壁画に囲われた空間は圧倒的な体験となること間違いない。画像:朝日新聞社提供
忠実に再現された『ベートーヴェン・フリーズ』。全長34mに及ぶ壁画に囲われた空間は圧倒的な体験となること間違いない。画像:朝日新聞社提供

人物画が多いクリムト。しかし自画像は残しておらず、男性の肖像画は少ない。「自分を描くのは興味がない。女に興味がある」と発言を残している。生涯独身だったが、アトリエに出入りするモデルたちとの間に少なくとも14人の子供がいたという。このクリムト展では彼のプライベートと創造を追究する。全体を通してみると、一人の芸術家の男の輪郭がくっきりと見えてくるかのようだ。女性を極限の美まで昇華させたこの天才の作品がそろうまたとない美術展。貴重な体験となること間違いない。連休に訪れてみてはいかがだろうか。

問い合わせ先

  • クリムト展 ウィーンと日本 1900 TEL:03-5777-8600
  • 場所/東京都美術館 企画展示室
    期間/2019年4月23日(火)~7月10日(水)
    時間/9:30~17:30(金曜は20:00まで)※入室は閉室の30分前まで
    休室日/5月7日(火)、20日(月)、27日(月)、6月3日(月)、17日(月)、7月1日(月)
    観覧料/一般¥1,600、学生・専門学生¥1,300、高校生¥800、65歳以上¥1,000
    住所/東京都台東区上野公園8-36
この記事の執筆者
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