「そりゃあ万年筆というのは、男が外に出ている場合は、それは男の武器だからねえ、刀のようなものだからねえ」『男の作法』(新潮文庫刊)と万年筆を語るのは作家・池波正太郎だ。さらには、人の目に付きやすいものではなく、実際に仕事に使うものに凝るべきだと、伊達男の心意気を説く。英国の名門パーカーの『デュオフォールド』は、ジャズエイジ華やかなりし頃に生まれた。天冠にエースの紋章、18金のペン先、熟練の職人が手作業で組み立てる。多くの有名人に愛用されていた名品だ。その後の常識となる毛細管現象を利用した万年筆を生み出した、ウォーターマン。精緻な加工が施された『エクセプション ナイト&デイ プラチナST』は、ペン先に見事な意匠を備え、筆記具を超えた優雅さを醸し出す。エス・テー・デュポンの『ブラック・マザー・オブ・パール』に使われるのは、真珠を育む天然の黒蝶貝。虹色に輝く同軸が唯一無二の存在感を放つ。池波正太郎のような名文は容易には書けないが、いずれの名万年筆も伊達男を彩る武器となるはずだ。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious 2016年春号「書斎の名品 」より
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- クレジット :
- 撮影/戸田嘉昭、唐澤光也(パイルドライバー)スタイリスト/石川英治(tablerockstudio)文/小暮昌弘