国内外を問わず世界的な評価を得ている指揮者、大野和士氏が新国立劇場のオペラ芸術監督になって初めてのシーズン(2018/2019)も、いよいよ終盤戦。5月17日からは、不動の人気を誇る名作オペラ、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』が上演される。

新国立劇場「ドン・ジョヴァンニ」2014年公演より 撮影:寺司正彦

手当たりしだいに女を騙し、なんとその数2065人という希代のプレイボーイ、ドン・ジョヴァニ。娘を誘惑したあげく、その娘の父親を決闘で殺してしまう。亡霊として現れたその父親に悔俊を求められるが、それを拒んで地獄に堕ちていく、というのが、つとに知られた『ドン・ジョヴァンニ』のあらすじ。疾走感あふれるストーリーが数々の美しいアリアで飾られ、最後の地獄落ちで圧巻のクライマックスとなる。何度でも観たくなるような、誘惑のオペラだ。

作曲者のモーツァルトは、35年の短い生涯に珠玉の作品を多数産み出した。中でも、30歳になってから書かれた『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァニ』『コジ・ファン・トゥッテ』『魔笛』は、モーツァルトの四大オペラと呼ばれる。

そのひとつ『ドン・ジョヴァニ』は、17世紀のスペインで広く流布していたドンファン(Don Juan)伝説を元に作られているが、今回の新国立劇場のプロダクション(グリシャ・アサガロフ演出)では、ドン・ジョヴァンニを18世紀に実存したカサノヴァになぞらえ、舞台もヴェネツィアに移している。その演出アイディアに、オペラ・ファンからの大きな注目が集まっている。

魅力的なキャストが集結する舞台

新国立劇場「ドン・ジョヴァンニ」2014年公演より 撮影:寺司正彦

さらに、魅力的なキャストが集結することでも話題になっているのが今回の新国立劇場版『ドン・ジョヴァンニ』。

タイトルロールを歌うのは、世界の名門歌劇場で活躍するニコラ・ウリヴィエーリ。「ドン・ジョヴァンニのように個性的で、内面的な表現をする役柄は、演出家に言われたことをやるだけでなく、自分自身の解釈をそこに加え、自分ならではのドン・ジョヴァンニ像を作り上げなければなりません」と意欲的(新国立劇場・情報誌「ジアトレ」インタビューより)。日本でも様々な舞台に立ち、その色気のある歌声を聴かせてきたウリヴィエーリにとって、これが新国立劇場初登場となる。

そして、もうひとり、新国立劇場オペラ初登場となるのが脇園 彩。ミラノ・スカラ座を振り出しに、イタリア中の歌劇場を席巻している彼女にも期待が高まっている。

『ドン・ジョヴァンニ』には、それぞれに複雑な思いを抱く3人の女性が登場する。父親を殺したドン・ジョヴァンニに強い恨みをもちながらも、愛情を抱いているようにも見えるドンナ・アンナ。どんなに酷い仕打ちを受けながらも、ドン・ジョヴァンニの行くところにどこまでもついていくドンナ・エルヴィーラ。ドン・ジョヴァンニのために許婚のもとを去ろうとする、美しく小賢い百姓女ツェルリーナ。そんな複雑な思いを抱く3人の女性の中から脇園 彩が演じるのは、なんとかしてドン・ジョヴァンニを立ち直らせようとする情のある女性、ドンナ・エルヴィーラだ。

イタリアの歌劇場に躍り出た伸び盛りの若手、脇園 彩から目が離せない!

新国立劇場の舞台に立つ脇園 彩さん

脇園 彩は、東京藝術大学卒業後、同大学院での修業中に世界的なソプラノ歌手マリエッラ・デヴィーアの指導を受け、それをきっかけにイタリアで学びたいという目標を強く抱くようになる。2013年秋に文化庁派遣芸術家在外研修員としてイタリアのパルマに留学。翌年、ロッシーニの生誕地であるペーザロで「ロッシーニ・オペラ・フェスティバル」のオーディションに合格。そして、『子供のためのチェネレントラ』でミラノ・スカラ座にデビューする。その後、ボローニャ歌劇場、フィレンツェ歌劇場、トリエステ・ヴェルディ劇場をはじめ、数々の舞台に立つ。高い演技力、舞台姿の美しさが多くの観客の心をとらえるが、同時に、イタリア語の発音の完璧さが本場関係者を認めさせてきたと言われている。

日本では2017年に藤原歌劇団『セビリアの理髪師』ロジーナ役で鮮烈なデビューを果たした。今回、『ドン・ジョヴァニ』で初の新国立劇場の舞台に立つ脇園 彩。これから、さらに大きくはばたくにちがいない脇園 彩の姿を目撃しない手はない。

■新国立劇場 2018/2019シーズンオペラ

モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』[全2幕/イタリア語上演 日本語字幕付]
公演日:2019年5月17日(金)~25日(土)※26日(日)貸切
会場:新国立劇場オペラパレス/東京都渋谷区本町1-1-1

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この記事の執筆者
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。
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