レンズは大きく分けると、ズームレンズと単焦点レンズがある。汎用性が高いのがズームレンズだとすれば、単焦点レンズは万能型ではないが、高画質な写真が撮れるのが持ち味だろう。
「GRシリーズ」は単焦点18.3mm(35mm換算で28mm相当)レンズ一体型のカメラだ。暗い場所や速い動きといった厳しい環境でも描写力に優れた写真が撮れ、それが”最強のスナップシューター”と呼ばれるゆえんだろう。
「GR III」は歴代のGRレンズよりも高い機能を有し、シャープで抜けのよい描写を実現。ボディ内手ぶれ補正機構も実装し、手ぶれによる影響をできるだけ軽減させている。
どんな写真を撮るのか。撮影者を試す「GR III」
マクロモードは最短撮影距離0.06mとなり、迫力のある近接撮影が可能になった。
しかし被写体によってはオートフォーカスが迷うことがあったり、手持ちゆえにピント位置のズレなどがあった。思い通りの写真を撮るには慣れと経験が必要かもしれない。
広角レンズは広い範囲を切り取ると、余計なものが画面の中に写ったり、手前と奥に写るものの遠近感が強調されることもある。一眼カメラ用より大きい口径のレンズにも劣らないほどの解像力を有するこの単焦点18.3mm(35mm判換算28mm相当)レンズの高い描写力を無駄にしかねない。
好みはあるだろうが、本棚の写真からもわかるように、単焦点レンズの「GR III」はしっかりと被写体観察したうえで、構図を選び、考える大切さを改めて教えてくれるとも言える。さらに言えば、撮影者のセンスが問われるかもしれない。
暗室作業を思い出させるイメージコントロール機能
イメージコントロール機能は、フィルム時代のフィルム選びや暗室でのプリント作業の楽しさを思い出させてくれた。
10種類の基本モードの中から自分好みのモードを選び、さらにデジタルの利点を活かして、色相や彩度、露出やコントラストなどのパラメーターを自分好みに調整し、作品を作り上げることができる。
特に10種類の基本のイメージコントロールの中に4種類のモノクロのモードが入っていることが嬉しかった。
モノクロ写真はシャドウからハイライトの階調やコントラストの強弱が作品の要になる。被写体をどう表現したいか、を考えて選択できるのはありがたかった。
速写性にも優れ、携帯しやすい。ゆえの“最強のスナップシューター”
スナップには瞬発力が必須である。「GR III」は「GRシリーズ」のこだわりはそのままに、速写性にも特化している。
小型で軽量なため携帯性にも優れ、バッグやポケットの中に入れて簡単に持ち運べる。ストラップを付けて首から下げていても、シャッターチャンスを狙う時に片手に持ちながらでも邪魔にならなかった。
閃きや出会いの瞬間、右手の人差し指で電源ボタンを押しながら被写体にカメラを構え、タッチパネルでピント位置を決めてシャッターを切る。このスムーズな流れは本当に心地良い。
ただし、夢中になって撮影していると、あっという間にバッテリーを消耗していたことがあった。撮影可能枚数が約200枚のため、バッテリー容量を増やしてほしいのが切なる願いだ。
何気ない街歩きや散歩も「GR III」をおともにすれば、日常とは違うもの、ふとしたものに出会える旅になるだろう。
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- TEXT :
- 津島千佳 ライター・エディター
- PHOTO :
- 帆刈一哉