スナック初心者も訪れやすい、開放感ある店

新宿区荒木町。江戸時代には花街として栄えたこの街は、小さな路地まで飲み屋がびっしりと連なっていることでも知られる。新宿通りから、荒木町のメインストリートともいえる車力門通りを入る。

江戸時代、荷物を積んだ荷車がこの通りを走っていたことから、車力門通りと呼ばれるようになった
江戸時代、荷物を積んだ荷車がこの通りを走っていたことから、車力門通りと呼ばれるようになった

飲食店が立ち並ぶ通りを歩いていると、飲み屋の看板が連なる小路がある。この中の一つ『アートスナック番狂せ』が今晩の店だ。

様々な飲み屋の看板が灯る路地。のんべえにはたまらない
様々な飲み屋の看板が灯る路地。のんべえにはたまらない

路地の奥にある店の前に立つ。一般的なスナックは扉が閉ざされ、窓もないため外から中をうかがい知るのは難しい。でもこの店の扉は開きっぱなし。なんなら外で飲める小さなテーブルまである。

扉が開け放たれ、スナックのイメージとは対極の開放的な雰囲気
扉が開け放たれ、スナックのイメージとは対極の開放的な雰囲気

店内は6席のカウンターと2名掛けのテーブルがある、こじんまりとした空間だ。常連をはじめとする客がひっきりなしに訪れるため、18時の段階で満席。中の席が空くまで、今宵のパートナーの宇野さんと外でのんびり待つことにしよう。

肴はアート。一風変わった飲み方ができる

今夜のパートナー宇野泰子さん。荒木町にはお気に入りのチャイニーズレストランに行くため、ちょくちょく訪れる
今夜のパートナー宇野泰子さん。荒木町にはお気に入りのチャイニーズレストランに行くため、ちょくちょく訪れる

宇野さんがこの店に興味を持ったきっかけを聞いた。

「趣味が美術館巡りなんです。このお店って『アートスナック』って名乗っているじゃないですか。スナックでアートってどんなのだろうって」

アートスナックと称するだけあって、この店では新進のアーティストのために展示スペースを設けている。

店の奥が展示スペース。この時は、イラストレーターのたざきたかなり氏の作品を紹介していた
店の奥が展示スペース。この時は、イラストレーターのたざきたかなり氏の作品を紹介していた

「私が絵を見るのが好きで、気軽に鑑賞できる場所があったらいいなと思ってこのスタイルになりました」

と、2008年にこの店をオープンさせたママの公家智子さんが話してくれた。

「ギャラリーのレンタルって高額なので、うちでは作家さんに無料でスペースを貸し出しています。その代わりと言ってはなんですが、作家さんにはできるだけ店に足を運んでもらい、お客さんと交流してもらうようにしています。出版社や広告代理店の常連さんも多いので、作家を結びつけるハブの役割を果たせられればと」

公家さんが店をオープンさせたのは25歳の時。「店名はエッセイストの坂崎重盛さんにつけていただきました」
公家さんが店をオープンさせたのは25歳の時。「店名はエッセイストの坂崎重盛さんにつけていただきました」

展示する作家は毎月変わり、作品もイラスト、写真、インスタレーションと幅広く未知のアーティストに出会える。飲みながらアートに触れられるのもまた乙だ。

中の席が空いた。後編ではアート以外のこの店の魅力も探っていこう。

【アートスナック番狂せ】

  • アートスナック番狂せ TEL:非公表
    住所:東京都新宿区荒木町3 ソシアルアラキビル1F
    営業時間:12:00〜24:00
    定休日:土曜・日曜・祝日
    メニュー:チャージ500円(お通し付き)、生ビール、赤・白グラスワイン各500円、ハイボール、各種ドリンク500円〜、フード各1,000円
この記事の執筆者
フリーランスのライター・エディターとして10年以上に渡って女性誌を中心に活躍。MEN'S Preciousでは女性ならではの視点で現代紳士に必要なライフスタイルや、アイテムを提案する。
PHOTO :
黒石あみ