マクラーレンが、彼ら第4のカテゴリーとなる「マクラーレンGT」を発表した。

 現在、マクラーレンはアルティメット、スーパー、スポーツと3つのカテゴリーを展開しているが、マクラーレンGTは新しいカテゴリーとなる。

 発表に先立つ数週間前に、筆者は一足先にその姿と対面する幸運に恵まれた。

コンペティショナルでラグジュアリー!

ひと目でマクラーレンとわかるスタイリングだが、どことなくやわらかな雰囲気を漂わせている。
ひと目でマクラーレンとわかるスタイリングだが、どことなくやわらかな雰囲気を漂わせている。
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ガラス張りのリアゲートの下には420リッターの収納スペースが。ミッドシップとは思えないほどの大容量だ。
ガラス張りのリアゲートの下には420リッターの収納スペースが。ミッドシップとは思えないほどの大容量だ。

 ロンドン郊外のマクラーレン・テクノロジー・センターに赴くと、入り口でスマートフォンとカメラを預けさせられた。同じように世界各国から召集されたジャーナリストが20名弱も同じようにしている。

 さっそく、プロダクトマネージメント責任者のイアン・ディグマン氏が次のように説明した。

「お見せするクルマは、マクラーレンの第4のシリーズとなります」

 では、新しいマクラーレンGTは、どこにどう位置付けられるのか?

「スーパーとスポーツの間に入りますが、どちらよりもロードユース方向に振っています。コンペティションレベルの性能を持ち、同時に大陸横断の能力を併せ持っているのです」

 つまり、アルティメット、スーパー、スポーツというパフォーマンス順に一直線につながっていた3つのシリーズの順列からロードユース方向にズレたところに位置する。

 これまでの3つのカテゴリーが動力性能を第一に造られてきたのに対して、GTは実用性と快適性も重視されている。「大陸横断の能力」とは、それを指している。

今までのマクラーレンとは明らかに異なる雰囲気

薄型でも体を優しく包み、疲労を感じにくいシートがマクラーレンの特徴。GTではインテリアトリムにカシミヤのオプションも予定されているとか。
薄型でも体を優しく包み、疲労を感じにくいシートがマクラーレンの特徴。GTではインテリアトリムにカシミヤのオプションも予定されているとか。
前席から後方を眺めたアングル。積載能力の高さがうかがえるカットだ。
前席から後方を眺めたアングル。積載能力の高さがうかがえるカットだ。
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 しかし、メカニズムの基本構成は大きくは変わらない。GTも、カーボンファイバー製シャシー「モノセルII-T」に軽合金製サスペンションを組み合わせ、620馬力の4.0リッターV8ターボエンジンをミドに搭載している。

 大きく異なるのは、相互連関式の油圧ダンパーシステム「PDC」を更新したこと。優れた乗り心地を実現し、車高調整も行われ、アプローチアングルも実用的なものにした。

 また、『大陸横断』の際に重要になってくる荷物の積載量も増やされた。前150リッター+後420リッターで合計570リッターという積載量はライバルたちを大きく凌ぐ。

 場所を移動し、実車と対面した。GTは、既存の3つのシリーズのどれとも似ていない。穏やかでエレガント。流れるような斜め後ろ姿が特に魅力的だと思った。色の濃さを変えられる、オプションのガラスルーフを選ぶとよりラグジュアリーな雰囲気を醸し出せるだろう。

 GTはマクラーレンの新境地を切り拓くことになるだろう。ややもするとパフォーマンス一辺倒に捉えられていたかもしれないマクラーレン各車に、高性能スポーツカーのあるライフスタイルの楽しみと喜びをもたらす役割をGTは果たすことになるはずだ。と同時に、高級車メーカーとしてのマクラーレンを新しいステージに引き上げることになるだろう。

この記事の執筆者
1961年東京生まれ。新車の試乗のみならず、一台のクルマに乗り続けることで得られる心の豊かさ、旅を共にすることの素晴らしさを情感溢れる文章で伝える。ファッションへの造詣も深い。主な著書に「ユーラシア横断1万5000km 練馬ナンバーで目指した西の果て」、「10年10万kmストーリー」などがある。