男が帰るべき「ショットバー」を探す旅。水先案内人は切り絵作家の故・成田一徹氏。氏が愛し、その情景を切り絵に刻んだ全国のバーの中から、神戸・横浜のショットバー6軒を厳選。東西を代表する港町のバーに、香り立つ昭和のにおいをたどった。
男が訪れるべき港町の「ショットバー」を巡る
神戸のバーの正統を守り続ける
初めて扉を開くときには思わず緊張してしまう、神戸三宮の名店「サヴォイ北野坂」。が、一杯目のグラスを空けるころには、白のタキシード姿がダンディなマスター、木村義久さんの笑顔とジョークに心が解けている。一文字に延びたカウンターには席ごとに仄かなスポットライトが当たり、12の丸い明かりの連なりになっている。その中に差し出されたマティーニは、琥珀色に美しく輝く。
TEL:078-331-8977
営業:月~土:17時~24時、日・祝:17時~22時 休不定休
アクセス/JR「三ノ宮駅」・阪神・阪急「三宮駅」より徒歩5分
オールドボトルで神戸の夜を閉じる
バーの街、三宮にあって異彩を放つ「バーキース」。マスターは名門ホテルでバーテンダーを務め、カクテルの名手として注目された井伊大輔さん。開店当初は、カクテルを目当てに来る客が多かったというが、今では、カウンターに並ぶビンテージのウイスキーやリキュールにも人気が集まる。一杯目のオールドボトルはやはり、井伊さんに任せよう。神戸の長い夜の締めくくりにふさわしい店だ。
TEL:078-393-0690
営業:18時~26時 日曜休み
アクセス/JR「三ノ宮駅」・阪神・阪急「三宮駅」より徒歩7分
男たちが惚れる唯一無二の存在感
成田一徹氏の作品に、煉瓦造りのバーの扉を押し開ける男の後ろ姿を描いた一枚がある。老舗と呼ぶにふさわしい歴史を刻む「ヤナガセ」だ。扉を開けると静かにジャズが流れる。ずっしりとした欅のカウンターの向こうに弟子と共に立つのがバーテンダーの中泉勉さん。上級職の船乗りが帰港のたびに訪れる、そんな時代の神戸のバーを知悉するバーテンダーとの会話を楽しみに訪れる客は多い。
TEL:078-291-0715
営業:17時30分~24時
アクセス/JR「三ノ宮駅」・阪神・阪急「三宮駅」より徒歩12分
寛容な空気感がどこか懐かしい
バー好きが高じ、20年ほど前に「スリーマティーニ」の看板を掲げた山下和男さん。野毛で創業し、その後、山下公園にほど近い現在の場所に移転。店内に所狭しと飾られる小物は山下さんが収集したもの。その賑々しさが、酒場らしい雰囲気を醸す。酒はもちろん、ナポリタンやカレーなどのフードも評判。飲みながら腹ごしらえもした、船員たちの陽気な声が聞こえてきそうな港町のバーだ。
TEL:045-664-4833
営業:月~金:17時~、土日:14時~。日月:24時閉店、水~土:25時閉店 火曜休み
アクセス/みなとみらい線「元町・中華街駅」より徒歩3分
国際港都の文化をまとったたたずまい
「こんばんは」。扉を開けると、マスターの金子昌司さんの弾みのある声に迎えられる。店の奥へと進み、きれいに磨かれたカウンターに着くと、インテリアや調度類が視界に入る。どれも丁寧に選ばれたことがわかる良質なものだ。店の設計もほとんど自ら行ったという金子さんがこだわったのは、開港時の横浜の独特な文化の薫り。もちろん、店名も、明治期の横浜を照らしたガス灯に因んでいる。
TEL:045-641-8901
営18時~24時 休日・祝日、土曜は不定休
アクセス/みなとみらい線「馬車道駅」より徒歩3分
船員バーの面影と名前を継承する
外国人向けの船員バーが隆盛を極めた時代もあった横浜中華街。そこに’70年代初め、ノルウェー人の船員が開いたのが「ノルゲ」。今、その店の名を守っているのが、若きバーテンダーの中村英吾さん。往時の船員バーとは趣が違うというが、天井まで板張りのくつろげる店内は船室のイメージ。鍵型にカーブした独特なカウンターで、横浜の名門ホテルで腕を磨いた中村さんのカクテルを頂こう。
TEL:045-641-7020
営業:月~土:18時~27時、日・祝:17時~24時
アクセス/JR「石川町駅」より徒歩3分
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- クレジット :
- 撮影/篠原宏明