なぜ、このかたちになったのか。なぜ、この大きさが必要なのか。なぜ、この付加機能が生まれたのか。そういうすべては、たとえばトレンチコートが戦場で生まれたことや、ポロシャツがテニスコートで生まれたこと、タッセルシューズのタッセルが必要になったことなどと同じに、必ず理由がある。物語があるのだ。そしてそういう物語が男は好きだ。

つまり男は時計の物語を読むのが愉しい。だから、たとえ同じに見えても、いくつも時計を買ってしまう。時計に魅せられ、夢中になってしまう。すなわち時計とは、男の大好きな物語なのだ。

●手巻き ● スターリングシルバーケース&チェーン ●ケース径/50㎜ ¥5,115,000(ラルフ ローレン 表参道〈ラルフ ローレン ウォッチ〉)

スターリングシルバーのケースを職人が伝統的な彫金技術で仕上げた、19世紀末のアメリカ西部を彷彿させる懐中時計。ずっしりとした手応えのなかに詰められたのは、メカだけではなく時計の「物語」なのである。

エルメス『アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ』

時間と日付のインダイヤルが回転し、ダイヤルに配された2つの月を満ち欠けさせる。まさに宇宙を写し取ったような時計だ。●自動巻き ●18Kホワイトゴールドケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/43mm (世界限定100本)¥3,200,000 (エルメスジャポン)

太古の頃、時間は目にすることのできない不思議なものであり、太陽の高さや、月の満ち欠け、星々の巡りによってのみ知りえるものであった。そしてそうした太陽や月や星の動きを観察し、写し取ろうとしたのが、時計の始まりだ。で、それだからなのだろう。人は今でも時計に天空の営みを重ねる。時計に宇宙を感じるのだ。

ブレゲ『トラディション 7067』

時計史上最も偉大な天才時計師であるブレゲの発明した革新的機構を搭載するモデル。精巧な機械仕掛けが、まさに幻のマシーンを彷彿させる。●手巻き ●18Kホワイトゴールドケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/40㎜¥4,330,000 (ブレゲ ブティック銀座)

時間は永遠のもの。途切れることなく流れ続けるものだ。だからそんな時間を表す時計は、その黎明期にはしばしば永遠に動き続けることを目ざした、すなわち永久機関を創造する試みと同義であった。つまり時計はかつて人類が夢見た幻の装置をルーツに持つ。そんな幻夢を秘めたマシーンであり、そこが男の心を揺さぶり魅了するのだ。

IWC『パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・トップガン “モハーヴェ・デザート”』

サバイバルツールでもある軍用時計を祖とする「パイロット・ウォッチ」の最新モデル。砂漠色のケースがまさに厳しい環境下でのツールを思わせる。●自動巻き ●セラミックケース×布製インレイ付きラバーストラップ ●ケース径/44.5 ㎜(世界限定500本)¥1,165,000(IWC)

時計は目にすることのできない時間を表すために生まれてきた。そうして時計が時間を表したとき、だれもが「同じ時間」を生きることになった。時間が社会の約束事になったのだ。たとえば、何時にどこでだれと何をすべきか。そういう約束は見えない時間を時計が表したからできるようになったこと。つまり時計は時間を計るツールであり、それゆえに人と人をつなぐツールとなった。時計は自分と社会をつなぐ、とても大切なツールなのだ。

ヴァシュロン・コンスタンタン『パトリモニー・オートマティック』

ドレスウォッチは薄いほどエレガント。というのを体現したモデル。薄く滑らかなケースがシャツのそで口に隠れ、最高にドレッシーに装えるのだ。 ●自動巻き ●18Kイエローゴールドケース×アリゲーターストラップ ●ケース径/40mm ¥2,810,000 (ヴァシュロン・コンスタンタン)

かつて時計は時間を知るために不可欠なものであり、それゆえに時計を腕につけているのは「時間を守る」ということを表す、いわば社会人の証であった。しかし一方、大切な人との会話などの最中に時計が腕元に見えるのは、相手に「時間を気にしている」と思わせてしまう、とても不作法なことになる。そしてそれだから、薄くそで口に隠れるドレスウォッチを選ぶのが、最も知的でエレガントな所作。大人の男の最上級の装いなのだ。 

※掲載した商品の価格は、すべて税抜きです。
<出典>
メンズプレシャス夏号 腕時計は男の「ロマン」「スタイル」だ!
【内容紹介】腕時計は「ロマン」「スタイル」だ!/男の装いに美しい時計が必要な7つの理由/教えて! マーク・チョウの「時計術」/名品時計録2019/「クラシコ80’s 」がやってきた!
2019年6月6日発売 ¥1,200(税込)
この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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クレジット :
撮影/戸田嘉昭(パイルドライバー)スタイリスト/石川英治(Tablerockstudio)、河又雅俊 構成/山下英介(本誌)