世界各地で理想の時計づくりをしている人たちをオーガナイズしているのが、通称「アカデミー」という、独立時計師が属するAHCI=アカデミー・オルロジェール・デ・クレアトゥール・アンデパンダンだ。

30人ほどの正会員の中には、今をときめく時計師フランソワ・ポール・ジュルヌやアントワーヌ・プレジウソ、そして初期メンバーにはフランク・ミュラーも名を連ねていて、彼らのつくり出す時計は、常に時計業界から注目をされ、彼らが発明し特許を得たものを、多くのメジャー・ブランドが採用してきたものだった。今年のバーゼルワールドの会場でも「アカデミー」のブースは大人気で、いつ行ってもたくさんの時計ファンや、リテーラー、そして時計ブランドの人々で賑わっていた。

牧原大造さんの『菊繋ぎ紋 桜』

埼玉県郊外の自宅兼工房にて時計づくりに励むのが、1979年生まれの若き時計師牧原大造さん。時計製作と同時に、伝統的な彫金技術にも魅了された彼が、途方もない努力の末にたどり着いたのが、日本古来の美意識をちりばめた時計であった。『菊繋ぎ紋 桜』と名付けられたその作品には、なんと文字盤に伝統的ガラス工房「ミツワ硝子工芸」に別注した、菊をイメージした江戸切子が、そしてムーブメントには、自らが彫金した桜の装飾が施されている! 厚さ0.5mmという江戸切子の繊細さと、彫金が放つ力強い華やぎ。海外コレクターからも人気を集める一本だ。税込¥5,580,000~。受注生産につきHP(https://www.daizohmakihara.jp)にてコンタクトを。

「アカデミー」には日本人のメンバーもいて、そのひとり目は菊野昌宏氏で、江戸時代の和時計の複雑なメカニズムを、腕時計にするなどの技量が認められ、正会員となった人だ。

そしてふたり目の正会員となったのが浅岡肇氏で、この人は東京藝大のデザイン科を卒業しプロダクトデザイナーとなった後、興味のあった時計を自分でつくってみたいと思い、試行錯誤しながらやってみたらトゥールビヨンができてしまったという、とんでもない才能の人物である。

驚いたことに彼は、普通は時計師になる人が学ぶ時計学校に行くこともなく、独学で時計をつくったのだと聞く。その彼の時計は世界的評価を得ている。現在彼の時計を手に入れるのに数年待ちという。

浅岡 肇さんの『TSUNAMI DELUXE』

トゥールビヨンを独学でつくった天才職人、浅岡肇さん。その代表作『TSUNAMI DELUXE』は、〝独立時計師の作品〟という先入観からすると、意外にも極めてシンプルな3針時計。そのスタイリッシュなルックスは、もともと一流のプロダクト&グラフィックデザイナーとして活躍していた彼のセンスのなせる業だろう。しかしこの時計が目の肥えたマニアを唸らせる真骨頂は、シースルーバックから眺めるムーブメントにある。なんと直径37㎝の小さなケースの中に、まるで懐中時計に施されるような、直径15㎜の巨大な天輪(時計の心臓部)が力強く鼓動しているのだ。作業機械の生産からはじまり、針一本、ムーブメントの部品ひとつに至るまで自らつくり出すという、極限の美意識が息づいた名品。数年待つ価値はある! 税抜¥4,200,000。受注生産のためHP(www.hajimeasaoka.com/)にてコンタクトを。

そして今年、準会員となった牧原大造氏は、精緻な江戸切子の文字盤を持ち、そしてムーブメントに、これも美しい桜のエングレーブを施した時計を出品し話題となった。彼もまた高校を卒業後に料理人として8年間働いた後、本当にやりたかった仕事をするために時計学校に入り、卒業後はその学校で教鞭をとりながら、自分の夢の時計をつくり出したという。そんな夢にあふれた「独立時計師」の時計に注目してみたい。

※掲載した商品の価格は、すべて税抜きです。
<出典>
メンズプレシャス夏号 腕時計は男の「ロマン」「スタイル」だ!
【内容紹介】腕時計は「ロマン」「スタイル」だ!/男の装いに美しい時計が必要な7つの理由/教えて! マーク・チョウの「時計術」/名品時計録2019/「クラシコ80’s 」がやってきた!
2019年6月6日発売 ¥1,200(税込)
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名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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クレジット :
撮影/新垣隆太(パイルドライバー) 文/松山 猛 構成/山下英介(本誌) 
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