世界各地で理想の時計づくりをしている人たちをオーガナイズしているのが、通称「アカデミー」という、独立時計師が属するAHCI=アカデミー・オルロジェール・デ・クレアトゥール・アンデパンダンだ。
30人ほどの正会員の中には、今をときめく時計師フランソワ・ポール・ジュルヌやアントワーヌ・プレジウソ、そして初期メンバーにはフランク・ミュラーも名を連ねていて、彼らのつくり出す時計は、常に時計業界から注目をされ、彼らが発明し特許を得たものを、多くのメジャー・ブランドが採用してきたものだった。今年のバーゼルワールドの会場でも「アカデミー」のブースは大人気で、いつ行ってもたくさんの時計ファンや、リテーラー、そして時計ブランドの人々で賑わっていた。
牧原大造さんの『菊繋ぎ紋 桜』
「アカデミー」には日本人のメンバーもいて、そのひとり目は菊野昌宏氏で、江戸時代の和時計の複雑なメカニズムを、腕時計にするなどの技量が認められ、正会員となった人だ。
そしてふたり目の正会員となったのが浅岡肇氏で、この人は東京藝大のデザイン科を卒業しプロダクトデザイナーとなった後、興味のあった時計を自分でつくってみたいと思い、試行錯誤しながらやってみたらトゥールビヨンができてしまったという、とんでもない才能の人物である。
驚いたことに彼は、普通は時計師になる人が学ぶ時計学校に行くこともなく、独学で時計をつくったのだと聞く。その彼の時計は世界的評価を得ている。現在彼の時計を手に入れるのに数年待ちという。
浅岡 肇さんの『TSUNAMI DELUXE』
そして今年、準会員となった牧原大造氏は、精緻な江戸切子の文字盤を持ち、そしてムーブメントに、これも美しい桜のエングレーブを施した時計を出品し話題となった。彼もまた高校を卒業後に料理人として8年間働いた後、本当にやりたかった仕事をするために時計学校に入り、卒業後はその学校で教鞭をとりながら、自分の夢の時計をつくり出したという。そんな夢にあふれた「独立時計師」の時計に注目してみたい。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- クレジット :
- 撮影/新垣隆太(パイルドライバー) 文/松山 猛 構成/山下英介(本誌)