英国紳士が愛してきたスポーツカー、アストンマーティンには、ジェイムズ・ボンドの映画でも知られる「DB」というシリーズがある。中興の祖、デイビッド・ブラウンの頭文字をとった車名で、2プラス2シーターを意味する。

 最新のDBがDB11 AMRだ。いちいち解説めいて申し訳ないが、AMRとはアストンマーティン・レーシングの略。ルマン24時間レースに代表される耐久レースなどで活躍するレーシングモデルを手がける部門であり、昨今では、トップクラスのパフォーマンスを発揮する量産モデルにこの名が冠されるようになった。

大排気量の醍醐味を味わう

AMR仕様は全体にモノクロームで仕上げられている。
8段オートマチックギアボックス搭載。

 2018年5月にイギリス本国で発表されたDB11 AMRは、従来のDB11(V12)に代わるモデルだ。12気筒搭載車としては「DBS」もラインナップに持つアストンマーティンでは、DB11のイメージをよりレーシー(レーシングカー的)に仕立て直しモデル間の差別化をはかったのだった。

 エンジンは従来のDB11と基本的におなじ、5.2リッターV型12気筒だ。最高出力は従来型より30馬力アップの639ps(470kW)となった。700Nmの最大トルクは据え置きだ。700Nmあれば充分である。

 私がこのクルマを気に入っているのは、ものすごくフレキシブルな点が大きい。アクセルペダルをちょっとでも踏み込もうものなら、ロケットなみの加速を味わわせてくれる。いっぽうで、最大トルクが1500rpmから発生することもあり、乗りやすい。街中でも楽チンに操縦が出来るのだ。

 V12は回転をあげていくと、まるで動物が咆えているような、かなり気持のよい音を聞かせてくれる。ステアリングホイールに軽く手を添えているだけで、みるみる速度を上げていく走りこそ、AMRの名に負うだけのものはある。12本のピストンがタイミングを合わせて爆発を繰り返し、きれいに回転があがっていく様子は、大排気量の醍醐味だ。

ステアリングホイールを握って親指で操作できる位置にドライブモードセレクター(右)とダンパーの減衰力コントローラー(左)が備わる。

現行ラインナップではもっともエレガント

内装の仕上げは豊富で、フルオーダーも可能。
リアにもシートがあるがブリーフケースなどを置くのがもっともふさわしい広さ。

 ストレートだけでなく、コーナリングもまた快感だ。全長は4750ミリだがボディ幅は1950ミリあるのでコンパクトとはいいがたいけれど、後輪駆動のスポーツカーらしく、ステアリングホイールを切ったほうにすなおにノーズが入り、そこを後輪が大きなトルクでぐいと押しだすのが、気持いいのである。

 いっぽうで乗り心地は意外なほど快適である。前が扁平率40パーセント、後ろが30パーセントのタイヤに20インチリム径の軽合金ホイールが組み合わされていて、ハンドリング重視のスペックなのだけれど、ところが市街地だろうが高速だろうが、しなやかに動いて路面の凹凸もきれいに吸収してくれる。

 私がもうひとつ気に入っているのは、スタイリングだ。DB11は現行ラインナップのなかでもっともエレガントだと思う。ウィンドウグラフィクスとキャラクターラインが流れるような水平基調を強調していて、じつに均整のとれたプロポーションだと思う。

 タイヤの大きさが強調されているのは、スポーツカーの常道だし、アストンマーティンの伝統的な輪郭を与えられたフロントグリルも、アグレッシブさを感じさせる。全体としては、スポーティ、だがエレガント、あるいはスポーティでエレガントというバランスがとてもみごとなのだ。

リアのトランクは容量が大きくツアラーとしても充分使える。
この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。