セダンは時代おくれ? いや、洋服の世界ならトラッドがずっと残るのと同じで、セダンは価値の変わらないクルマのトラッドだ。スタイルの話だけではない。2019年3月に日本発売されたアウディの新型A6は積極的に選ぶ価値のあるモデルである。

居心地がよく、気持ちよく走る

アバントのボディサイズは全長4950ミリ、全幅1885ミリ、全高1465ミリ。
アバントのボディサイズは全長4950ミリ、全幅1885ミリ、全高1465ミリ。
アバントはルーフの前後長を短めにしてリアゲートを強く傾斜させたスポーティなスタイルを特徴とする。
アバントはルーフの前後長を短めにしてリアゲートを強く傾斜させたスポーティなスタイルを特徴とする。

 アウディの新型A6は、2018年に導入された新型A7スポーツバックや新型A8と基本的な車台を共用するモデルだが、ドライバーズカー(自分で運転するひとのためのクルマ)としてのキャラクターが最もはっきりしている。好感度大のクルマだ。

 まず導入されたのは、3リッターV6エンジンにクワトロシステムを組み合わせた「アウディA6セダン55 TFSIクワトロS line」と、ステーションワゴンの「アウディA6アバント55 TFSIクワトロS line」である。

 これがかなりいい。ホイールベースが2925ミリある室内は従来型より広くなって居心地がいい。それでいて、ハンドリングがとてもよい。つまりステアリングホイールを切るのに合わせて、じつに気持ちよくクルマが動くのだ。

 試乗したクルマは、じつはアウディの秘密兵器ともいうべき、「ドライビングパッケージ」を備えていた。「ダイナミックオールホイールステアリング」と「ダンピングコントロールサスペンション」と「ダイナミックステアリング」の組み合わせである。最大の特徴はステアリングホイールを切った角度に合わせて後輪が動くところだ。

セダンは全長4950ミリ、全幅1885ミリ、全高1430ミリ。
セダンは全長4950ミリ、全幅1885ミリ、全高1430ミリ。
クワトロ(全輪駆動)だが負荷の少ない走行中は完全な前輪駆動になって燃費を向上させる。
クワトロ(全輪駆動)だが負荷の少ない走行中は完全な前輪駆動になって燃費を向上させる。

SUVに勝る部分は確かにある

手に触れる部分のクオリティ感は高い。
手に触れる部分のクオリティ感は高い。
後席のレッグルームは先代A6を上回る。
後席のレッグルームは先代A6を上回る。

 低速では、後輪は前輪と逆の角度に切れる。それによってクルマの小回りが効くようになり、狭い場所での取り回しがかなりよい。いっぽう高速では同じ角度に切れる。それで安定しながらすばやく、車線変更が出来るのだ。

 ダンパーというスプリングの動きを規制するサスペンションの部品が電子制御されており、車体の動きを制御し、たとえばレーンチェンジや、カーブを曲がっていくときなど、後輪が操舵された状況での安定性を確保する。

 システムがうまく連携しているので、結果、ドライバーはとても楽しい思いが出来る。これらを運転の「味つけ」というなら、それがとても上手に出来ている。たとえばA7スポーツバックより自然なフィールだと感じたほどだ。

タブレット型スマート端末のように操作できる「MMIタッチレスポンス」。
タブレット型スマート端末のように操作できる「MMIタッチレスポンス」。
新型は低くワイドな「シングルフレームグリル」を特徴とする。
新型は低くワイドな「シングルフレームグリル」を特徴とする。

 いまはSUVばやりだけれど、セダンやセダンをベースに開発されたステーションワゴン(アウディの場合は「アバント」)は、設計上、サスペンションの自由度が高く、結果、乗り心地によりすぐれる傾向が一般的だ。

 SUVはトレンドで、ファッショナブルかもしれないけれど、ひとを乗せる機会が多いひとには、セダンを勧める。A6にすれば、ふだんの運転も楽しめるから、一石二鳥といえるかもしれない。

 価格はアウディA6セダン55 TFSIクワトロS line」が1060万円、ステーションワゴンの「アウディA6アバント55 TFSIクワトロS line」が1041万円だ。

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この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。