イタリアが英国とはまったく違うアプローチで服をつくるのはご存じだろう。クルマでも同じことがいえる。好例が、アルファロメオ・ジュリアだ。1962年に最初に登場したロマンチックな名前を再び与えられたセダンである。

セダンのカテゴリーを超越した運転感覚

楯型のグリルとそれを挟むようなエアインテークなどアルファロメオの伝統的なモチーフ。
楯型のグリルとそれを挟むようなエアインテークなどアルファロメオの伝統的なモチーフ。
全長4655ミリ、全幅1865ミリ、全高1435ミリ。
全長4655ミリ、全幅1865ミリ、全高1435ミリ。

 ジュリアは日本では2017年10月に発売された。全長4655ミリの比較的余裕あるサイズのモデルで、日本でもエンジンバリエーションが豊富なのも特徴のひとつといえる。

 モデルごとに異なるキャラクターを持っているのもジュリアの魅力で、なかでも私が好きなのは、「ジュリア2.0ターボQ4ヴェローチェ」というスポーティなモデルだ。スタイリッシュで、かつ軽やかと表現したくなる走りは、他になかなかない。イタリアだから出来るのかと思わせるものだ。

 エンジンは2リッター4気筒で、8段オートマチック変速機が組み合わされる。ジュリアの基本は後輪駆動で、Q4は80年代からアルファロメオがラインナップしている走りのための全輪駆動システム。ジュリアでは走行状況に応じて前輪へ駆動力を配分するばかりか、左右輪へのトルクの振り分けも可変だ。

 ジュリア2.0ターボQ4ヴェローチェのいいところは、ステアリング、車体の動き、加速、制動など、走りに関するすべての部分が、超とつけたくなるほどシャープなことだ。走り出したとたん、これはスポーツカーだ、と私は思った。

 アクセルペダルを軽く踏むと、ほぼ瞬時にクルマはダッシュをみせる。ステアリングホイールをわずかに切り込んだだけで、車体はすばやい反応で向きを変えていく。

 カーブの手前で自分はどれだけの速度を維持しながら、どこでブレーキを踏めばいいか。つねにそれを意識させられる。自分との戦いともいえるもので、まるでサーキットを走るようだ。

 やや極端なことをいえば、私は4ドアのフェラーリのようだと思った。パワーはフェラーリに届かないが、運転を楽しむ作りという意味では、セダンのカテゴリーを超越している。この鋭いドライビングゆえ、手に入れる意味があるのだ。

フードをやや長めにした均整のとれたプロポーション。
フードをやや長めにした均整のとれたプロポーション。

すべてが高得点なセダン

Q4は4WDのドライブトレインゆえ左ハンドルになってしまう。
Q4は4WDのドライブトレインゆえ左ハンドルになってしまう。
スポーティなブラックに加え、シート表皮はレッドやタンもある。
スポーティなブラックに加え、シート表皮はレッドやタンもある。

「DNA」とアルファロメオが名付けたドライブモードセレクターが備わっていて、ふだんは「N(ノーマル)」、走りを積極的に楽しみたいときは「D(ダイナミック)が選べる。

 ダイナミックはジュリア2.0ターボQ4ヴェローチェのポテンシャルをフルに堪能できる。すばらしい体験を約束してくれるモードだ。ただしノーマルでも十分に楽しい。ちなみに「DNA」の「A」はオールウェザーの略でいってみれば非常用だ。

 ジュリア2.0ターボQ4ヴェローチェは、それでいて、作りの品質感が高い。乗りこんだときのドアの開閉音にはじまり、シートの座り心地、走行中の振動(足まわりは硬めなのでややピッチングがあるが)、それに静粛性、どれも高得点なのだ。

 ダッシュボードのスイッチレイアウトもごちゃごちゃしていなくて、クリーンにまとめられているのも、とても雰囲気がいい。飾りたてない魅力がある。

 ジュリア2.0ターボQ4ヴェローチェは597万円で、同じ206kW(280ps)の最高出力に400Nmの最大トルクを持つ2リッター4気筒エンジンに後輪駆動システムを組み合わせた2.0ターボヴェローチェ(587万円)もある。

エンジンスターターはステアリングホイールに設けられている。
エンジンスターターはステアリングホイールに設けられている。

 モデルラインナップは、馬力でいうと下に147kW(200ps)とややおとなしめの2.0ターボ(446万円~)と、乗り心地も快適な2.2ターボディーゼル・スーパー(556万円)、トップに375kW(510ps)のクワドロフォリオ・ジュリア2.9V6バイターボ(1132万円)で構成される。車型はセダンのみだ。

 クルマ好きだけれど諸般の事情で所有者が1台に限定されるなら、ジュリア2.0ターボQ4ヴェローチェはかなりいい選択になるだろう。スポーティな傾向を好むとされるイタリア人のクルマづくり。こんなクルマを作れるのはすごい才能だ。

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この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。