いま深刻な環境問題に、プラスチックによる海洋汚染がある。目に見えるサイズのペットボトルやレジ袋だけでなく、砂つぶ程度の微小なマイクロプラスチックも海洋生物の生態系を脅かす。魚食する人間にも、その災禍がふりかかってくる。問題の解決に、積極的に関わっていこうとしているのが、オリスである。ダイバーズのコレクションに登場した新作「アクイス クリーンオーシャン リミテッドエディション」が、その象徴的かつ実践的なモデルだ。
数年前から海洋環境保全活動に積極的に協力してきたオリス。この問題に関しての新パートナーは“パシフィック・ガベージ・スクリーニング”。建築家、科学者らによる非営利組織は、世界の海からプラスチックを一掃するため、海水のプラスチック類を濾過するエコで巨大な構造物の実証実験を行っている。普及すれば問題解決に大きく寄与するプロジェクトを支援するためのリミテッドモデルとして誕生した。
深刻な海洋汚染に取り組むオリスが表現する海への愛
アクイス クリーンオーシャン リミテッドエディション
何より秀逸なアイデアは、そのケースバックである。「リサイクルPET製のメダル」をはめ込んであるのだ。問題の元凶を示しながら解決の希望を象徴するメダルは、素材のカラフルな色が混じり合い、ひとつとして同じものがない。声高に言い立てるのではなく、デザインがメッセージを伝えるのである。ベースの「アクイス」はそもそも、高性能な機械式ダイバーズウォッチだ。最先端のセラミック製ベゼルを装備し、防水性能も300メートルまで高めている。最近のオリスはダイヤル色の評価が高く、このモデルのグラデーションをかけたブルーも絶品。腕時計に込めた固有のテーマも、青色に透けて見える。
アクイス グレートバリアリーフ リミテッドエディションⅢ
小生は20代から30代にかけての10年間、ほぼ全ての週末は海に出ていた。だからこそ言うけれど、海が好きという人間の多くが、海を汚すことに無頓着である。スクリューに絡みそうな浮遊物には散々な悪態をつく一方で、タバコの吸い殻を海に投げ捨てるのはあたりまえ。いまでこそ電子タバコになって状況は変わっただろうが、ポロシャツの裾からライターを入れて強風下でも火をつける技は、新米ヨット乗りの必修事項だった。投げ捨てられたタバコのフィルターもプラスチック繊維であることなど、知りもしなかった。悔いるのは、早い方がいい。
看過できない世界中のゴミが流れ着くゴミベルト
海のない国スイスで100年以上の時を超えた時計ブランドが、海のことを本気で考えている。海洋国の人間としてエシカルな姿勢に敬意を持ち、共感もする。海のことを大切に思うのなら、ダイバーズウォッチはこのようなモデルを選ぶべきだ。「アクイス クリーンオーシャン リミテッドエディション」は、今年の有力候補なのである。
問い合わせ先
- オリスジャパン TEL:03-6260-6876
- TEXT :
- 並木浩一 時計ジャーナリスト