レモネード・メーカーとして富を築いたルフェーヴル氏が創業した「ラペルーズ」は長らく忘れられていたが、LVMHのCEOベルナール・アルノー氏の子息で同グループの複数の部門で責任者を務めるアントワーヌ・アルノー氏と香水で知られるジャン・パトゥの子孫であるバンジャマン・パトゥ氏が買収して生まれ変わった。
場所はセーヌ川沿いのグラン・オーギュスタン岸。
中世、この辺りにグラン・オーギュスタン修道院があったのだが、フランス革命の際に完全に破壊され、いまは地名にだけ残っている。フランス革命は1789年だったので、「ラペルーズ」はその少し前に誕生したことになる。
1766年創業の老舗レストラン「ラペルーズ」
この店には、デュマ、ゾラ、モーパッサン、ボードレール、プルースト、ヘミングウエイ、オーソン・ウエルズなど文豪が通い、セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンが食事をし、ウッディ・アレンは映画『ミッドナイト・イン・パリ』(2012年公開)の一場面をここで撮影した。そんなレストランの歴史を物語るように、レストランの廊下には常連客だった有名人の写真が飾られている。
歴史を物語る常連たちの写真
デュマは美食家で「趣味は食べること」。『デュマの大料理辞典』を執筆するほどであったが、彼が常連客だったということは当時も「ラペルーズ」はグルメが好む店だったことがわかる。
インテリアを担当したのは、売れっ子デザイナーのローラ・ゴンザレス。そして、テーブルコーディネートはコーデリア・ド・カステラーヌ。カステラーヌ家は趣味が良い一族として有名だ。当代いちのダンディとして知られたボニ・ド・カステラーヌこと、カステラーヌ侯爵を輩出している。
「ラ・ベル・オテロ」、「レザムール」など、見事なインテリアを持つ7つの個室があるのがこのレストランの建築の特徴だ。
個室はイベントの時のみ利用し、大きなホールで通常のレストラン営業を行うが、一部、見ることができるようになっている。
料理を担うシェフは、ミシュランの2つ星シェフのジャン=ピエール・ヴィガト。クラシックなレシピをリスペクトしたという料理の数々を披露する。場所柄ゆえ、考えていたのよりもずっと伝統寄りの高級ブルジョワ料理というおもむきだ。
パティスリーは、プラザ・アテネのエグゼクティブ・パティシエなどを務めたクリストフ・ミシャラク。彼はデザインコンシャスなスイーツで知られているが、「ラペルーズ」のデザートは見た目もやはりクラシック。だが、口当たりは現代人に合わせて軽く仕上げている。
2020年春、旧海軍省(オテル・ド・ラ・マリン)内に「ラペルーズ・カフェ」をオープンする計画で、このブランドを冠した様々なプロダクトを発売予定だ。
伝統や歴史のテーマパークのような「ラペルーズ」は、歴史はブランディングに重要なアイデンティティであり資産だと物語っている。真似することができない本物の老舗を進化させる試みに今後も注目したい。
問い合わせ先
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Lapérouse/ラペルーズ
51 quai des Grands Augustins 75006 Paris
- TEXT :
- 安田薫子 ライター&エディター
公式サイト:Tokyo Now