これまで音楽やアートに関わるライフスタイル系の「メゾン・キツネ」などが、カフェ営業を始めたたことはあったが、才能が注目されている若手ファッションデザイナー『シモン・ポルト・ジャクミュス』が飲食業界に乗り出すのは非常に珍しい。そもそもジャクミュスのキャリア自体が珍しい。
パリの新名所ギャラリー・ラファイエット
南仏プロヴァンス地方の小さな農村に生まれ育ったジャクミュスは、ESMODで数ヶ月ファッションを学んだが中退し、雑誌『CitizenK』のアーティスティック・ディレクターのアシスタントとなったが、これもすぐ辞めた。
20歳のときに自分のブランドをスタートしたところ、世界の有名セレクトショップから買い付けされるようになり徐々に知られるようになってきた。さらに2015年には、LVMHの特別審査員賞を授与されたことにより、世に広く知れ渡ることとなった。メゾン設立10年と歴史は浅いが、早いペースで着々と成功を収めている。
南仏の雰囲気を楽しみながら、名店のパティスリーを味わう
彼のデザイン・インスピレーションの源は自身のルーツでもある南仏だ。
この「カフェ・シトロン(フランス語でレモンの意味。プロヴァンス地方の特産物)」もまた南仏をコンセプトとしている。料理のチョイスから、レモンの木やテラコッタの壺が置かれた内装、ユニフォームまで全般にジャクミュスが関わっている。
フードは、ジャクミュスとともに「キャビア・カスピア」が担当しており、メニューは地中海にちなんだものになっている。
また、高級パラスホテル「ル・ムーリス」(パラスとは最高級ホテルに与えられる称号)、のパティシエであるセドリック・グロレが、このカフェのためにエクスクルーシブでレモンのパティスリーをクリエイトしているのも大きな話題。
セドリックのレモンのパティスリー以外のスイーツは、1730年創業のパティスリー「ストレール」や、1761年創業のショコラティエ「ア・ラ・メール・ド・ファミーユ」と老舗が軒を連ねる。1か所にいながらにしていくつもの名店の味にトライできるのはうれしい。
ここ数年、パリは地中海料理が流行っているのだが、ジャクミュスが関わったことで「カフェ・シトロン」はファッション業界の関係者やファッション・マニアの注目を集めることにも成功し、ファッションウィークには業界関係者が集まるニュースポットとなっている。
単なるファッション・デザイナーにとどまらず、縦横無尽に活躍するジャクミュスから目が離せない。
問い合わせ先
- Café Citron Paris
- 住所/Galeries Lafayette Champs-Elysées 60 avenue des Champs-Elysées 75008 Paris
- TEXT :
- 安田薫子 ライター&エディター
公式サイト:Tokyo Now