「道具」としての必然性が薄まった現代だからこそ、男の装いを完成させるキーパーツとしての時計は、改めてその重要性を増している。敢えて言おう。美しくなければ時計などつける必要がないのだ!ここでは玄人はだしの時計知識を誇るスタイリスト、櫻井賢之氏に自身が認めた美しい時計と、そのスタイリング術を伝授していただいた。
男の裝いに美しい時計が必要な理由
黒の装いに男としての高い格調を!パテック フィリップ『ゴールデン・エリプス』
このブランドにはいくつもの名品があるが、『ゴールデン・エリプス』は最もアバンギャルドな一本なのでは? 黄金比のオーバルケースは言葉に尽くしがたいオーラと存在感を放つが、ひとたびクラシックスーツに合わせるとしっくりなじむ。その薄さか、普遍的美しさゆえか、装いがシンプルであればあるほど、個性を際立たせてくれるだろう。
ジャケットスタイルに軽妙さを。!ルイ・ヴィトンの 『タンブール ホライゾン ホワイトセラミック』
ダイバーシティ(多様性)。今やルイ・ヴィトンの全プロダクトに共通している時代感が投影された、ラグジュアリーでストリートな一本だ。定番をビッグシルエットに落とし込んだ紺ブレに、パジャマシャツを合わせて、白のコネクテッドウォッチをチョイスすれば、2019年版大人のマリンルックの完成だ。
ジーンズスタイルにエレガンスを!エルメス『カレ アッシュ』
『美しい製品には機能が伴っていなければ』というメゾンのフィロソフィーは、時計づくりにおいてもブレることはない。美しく調和したインデックス、コックピットを感じさせるギョーシェ、職人技術の結晶ともいえるベルトの品質……。サラッと首に巻く同名のスカーフのように、スーツからデニムまでコーディネートを選ばない存在感がある。
リラックススタイルに気高さを!オーデマ ピゲ『CODE 11.59バイ オーデマ ピゲ・クロノグラフ』
「常に時計業界の革命児とも言われてきたオーデマ ピゲから、26年ぶりの新作が登場。それはひと言で言えば、コンテンポラリークラシック。クラシックの再解釈。つまり時計デザインの最進化形ともいえる。オーソドックスだけど、どこかアヴァンギャルド。現代のファッションキーワードにも合致する。マニファクチュールメゾンだからこそできる挑戦だと思う。最上級にして革新的、カシミヤの普遍的ジャージーセットアップを選ぶ人物像が目に浮かぶ」
いつものスーツスタイルにモダンさを!カルティエ『サントス ドゥ カルティエスケルトン』
スティール針と手巻きキャリバー9612MCのブリッジに、蓄光塗料のスーパールミノバを塗布した新しいスケルトンウォッチ。フラッグシップにして、従来とはまったく別物の顔つきだ。そのラグジュアリーさとモダンなデザインは、ネイビーのリネンスーツをサラッと着こなせるぐらいの余裕がないと似合わない。
定番の白シャツに粋を!シャネル『ボーイフレンド スケルトン』
スタイルを感じる時計は数少ないが真っ先に思い浮かぶのはこれ。ほどよいサイズ感は性差を超え、だれの腕にも色気を添える。ペアウォッチは嫌いだけれど、シェアウォッチならというユーザーにも最適だ。八角形のスケルトンケースに黒ストラップとゴールドケースを合わせる妙は、モヘア混のブラウンスーツに素足で黒のスリッポンを合わせる洒脱感にもどこか似ているように思う。
フォーマルにスタイルに洒落っ気を!トム フォード『002』
スタイルの追求という、他社とは違う発想でつくられた一本。グログランシルクをベルトに使用したメンズの究極のフォーマルウォッチは、トムフォードが世界初だろう。グログランラペルのイブニングと同素材のバタフライに合わせれば、最上級のペアリングの完成だ。スタイル、シーンに合わせて替えられるストラップの豊富さにも注目を!
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2019年夏号より
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- クレジット :
- 撮影/浅井佳代子 スタイリスト/櫻井賢之 ヘア&メーク/YAS(M0)モデル/Alban レイアウト/澤田 翔(H.D.O.)構成/山下英介(本誌)