キャデラックのSUVにはフラッグシップのエスカレードとは別に、スポーティなボディスタイルと軽快感のある走りを特長とするXTというラインアップが用意されている。古典的でボクシーなフルサイズボディのエスカレードに対し、一見してシャープでモダンな印象を受けるのがXTの特徴。
さらにこのXTはボディサイズによって、もっともコンパクトなXT4(日本未導入)、5人乗りの「XT5」、そして3列6人乗りの「XT6」というモデル構成になっている。つまり「XT6」はXTシリーズの中の最上位モデルであると同時に、キャデラックのSUVとしては「エスカレード」に次ぐ上位モデルだ。
近いボディサイズの輸入車では、BMW「X7」やメルセデス・ベンツ「GLS」、アウディ「Q7」、ボルボ「XC90」が挙げられる。もっとも、クルマはブランドごとに明確な違いがあり、単にボディサイズや価格だけで比較できるものではないことを明言しておこう。
アメリカの香りはやや希薄だが…
「XT6」の大きな特徴が、写真でおわかりのように個性的なフロントフェイスだ。横長のスリムなLEDヘッドランプと、その下に装備された縦長のデイライト(常時点灯するライト)、その中央にキラキラとしたクリスタルメッシュのフロントグリルが組み合わされ、キャデラックならではのエレガントさが表現されている。欧州車よりもきらびやかで堂々とした印象を受けるのは、アメリカ車の伝統といえるだろう。
一方で、インテリアは実利的で少しばかり素っ気ない。左ハンドルという大前提は別として、厳密にいえば「エスカレード」で感じた華やかさやゴージャス感ではなく、カジュアルな雰囲気が少し勝っている印象だ。3列シートに6名の乗員が快適に過ごすための空間はちゃんとしつらえてあるし、ゆったり感にも不満はない。しかし、「エスカレード」で感じたプラスαの飾り立てはなく、上質な素材を使っていながらも、シンプルな仕上げになっている。
個人的な好みの問題かもしれないが、ここはキャデラックらしさを存分に発揮し、もっとフォーマルな雰囲気に仕上げたインテリアでも、アメリカンらしさが味わえて良かったような気はする。ともあれ、気軽にアメリカンテイストを感じられるという意味では、マニア以外の方でもとっつきやすいだろう。
欧州車のよさを取り込んだモダンSUV
その“らしさ”という点で見ると、エンジンもアメリカンらしい感覚というより欧州車のようでもある。3.6ℓのV6エンジンは最高出力314馬力、最大トルク368N・mを発生するが、とてもシャープな吹け上がりを見せる性格。エンジンをキッチリと回してグングン加速していく感覚だ。
アメリカ車といえば低回転から太いトルクを発生し、エンジンをあまり高回転まで回すことなく、ゆったりと走る感覚だが、この「XT6」は少しばかり予想と違っていた。このエンジンは、キッチリと4000回転ぐらいまでヒュンヒュンと回しながら加速させていく感覚。ヨーロッパ車のような味わいがあり、スポーティな走りで本領を発揮する。もちろん日本の交通環境でもスポーティな走りを感じることはでき、不足を感じる場面はないと思う。さらにスポーティな走りからクールダウンして、高速道路を巡航してみると、気筒休止機構付きということもあり、静々としたエコ走行をキッチリとこなしてくれる順応性の高さも見せてくれた。
価格は870万円。最新の安全装備を満載し、9速ATというトランスミッションとフルタイム4WDを組み合わせた「XT6」はプレミアムSUVとして不足はほとんどない。むしろお買い得なのでは、と思った。昔ほどではないにせよ、アメリカ車の特徴はしっかり押さえているし、3列シートの実用性の高さは、アウトドア大国ならではのもの。SUVは初めてという人も、きっと満足できるだろう。
【キャデラック「XT6 プラチナム」】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:5,060×1,960×1,775mm
車両重量:2,110kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:9速AT
エンジン:V型6気筒DOHC:3,649cc
最高出力:231kw(314PS/6,700rpm)
最大トルク:368Nm/5,000rpm
価格:¥8,700,000~(税込)
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- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター