日本の交通事情を考慮したとき、最も身近なのは軽自動車で間違いない。だがその一方で、「良くできているのは分かるけど、やっぱりそこには行きたくない!」という気持ちもよくわかる。だいたい、今どきの軽自動車は上級グレードのフル装備だと200万円超えすら当たり前。それならAセグメントといわれる輸入コンパクトカーだって十分に射程圏内だ。そこにはフィアット・500、フォルクスワーゲン・up!、スマート、そして今回取り上げるルノー・トゥインゴといった個性派が並んでいる。
以前よりもすっきりとした顔立ちに!
現在、日本市場ではフィアット・500が圧倒的な強さを見せているが、大きな理由はやはり愛らしいスタイリングだと思う。トゥインゴも負けてはいるとは思わないが、今回のマイナーチェンジでフロントバンパーのデザインを変更。旧型にあったヘッドランプ下のLEDポジショニングランプをなくし、よりシンプルでスッキリとした表情としている。さらに、フロントバンパーの両端には、空気抵抗を減らすという機能をもつスリットを追加した。見た目だけじゃなく実利でも変更した理由があるというわけである。
こうした外見の変更に加え、「EASY LINK」と呼ばれる装備が標準化されたのもニュース。これは手持ちのスマートフォンを接続するだけで、カーナビや音楽を使いこなせるというもの。国産車でも増えてきている「ディスプレイオーディオ」といわれるジャンルの商品で、スマホを繋がなければカーナビ機能は使えない。それでも多種多様なカーナビアプリをインストールできるスマホを繋ぐと、すぐにカーナビ、音楽コンテンツ、ハンズフリーによる通話なども可能になる。iPhoneは「Apple CarPlay」、Androidなら「Google Android Auto」が使えるのだ。旧型にはディスプレイの場所にスマホを取り付けるスタンドが装備されていただけだったから、かなりスマートに進化したといえよう。
最大の個性に磨きがかかった!
そんな変更点を確認したところで走り出してみる。すぐに分かるのが、相変わらず当たりのソフトな乗り心地の良さ。路面からの衝撃を受けたときの初期のいなし方が上手いというか、ドタバタとした感じや小さいクルマにありがちな、ピョコピョコとした挙動があまりない。世界的にも完成度が高いといわれる軽自動車でも、このレベルにはまだ到達できていない。
おまけにトゥインゴのレイアウトは、リアエンジン・リアドライブ(RR)。前輪は駆動の役割から解放され、ステアリングフィールはとても上質。また、エンジンがないぶん前輪の切れ角を大きくできるため、めちゃくちゃ小回りがきくのである。込み入った道をくねくね走るときにはコンパクトなボディサイズも有利なのだが、このよく切れるステアリングが本当に痛快なのである。小回りのしやすさを表す最小回転半径は、軽自動車より小さい4.3mという数値だ(軽自動車は4.5mくらい)。
プレミアムカーのオーナーも満足できる
“道は車を作る”。こういわれて久しいのだが、まさにトゥインゴはそのコンセプト「Tailored for Paris(パリのために仕立てられた)」に恥じない出来栄え。市街地の石畳と細い路地。郊外に行けば、細かいうねりが連続するような田舎道がいまだにある。そんなところを走るとき、トゥインゴはRR方式とよく切れるハンドル、そしてソフトなサスペンションのおかげで快適に楽しく、キビキビと走れるのである。この気軽にして上質な乗り味があれば、十分にプレミアムカーのセカンドカー、サードカーとして成立できるはずだ。なによりもデザインやエンジン出力を2馬力アップしたり、「EASY LINK」を装備したりとかなりのブラッシュアップを施しても、旧型からの価格上昇はわずか3万円ほど。コスパの高い“ちょっとお洒落な足”として、ビギナーばかりか紳士が乗っても似合う。
<ルノー・トゥインゴ>
全長×全幅×全高:3,645×1,650×1,545㎜
車重:1,020kg
駆動方式:RR
トランスミッション:6速AT
エンジン:直列3気筒DOHCターボ・897cc
最高出力:68kw(92PS)/5,500rpm
最大トルク:135Nm/2,500rpm
価格:¥1,950,000(2019年9月末日までの税込価格)
問い合わせ先
- ルノー TEL:0120-676-365
- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター