タンゴという音楽を通じて、ファッションを考える

タンゴを聴きに行くことになった。ヨーロピアンタンゴではなく、アルゼンチンタンゴ。地球の裏側、ブエノスアイレスで生まれたものだが、日本人ならだれもが携える哀愁や郷愁、そんな感覚が呼び覚まされる音楽だ。

それもアストル・ピアソラの楽曲というから心が躍る。'80年代に来日した際、彼の演奏するバンドネオンを聴き、こんな音色を奏でる楽器が存在するのかと、衝撃を受けた。

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『ブエノスアイレスの夏』
アストル・ピアソラ
アルゼンチンタンゴの革命家で、バンドネオン奏者のアストル・ピアソラによる名曲。2枚組、全29曲収録のベスト・アルバム『Collector/ピアソラ・ベスト・コレクション』に収録。¥3,000 ワーナーミュージック​

さて、コンサートホールへ何を着て行こうかと迷う。深くスリットが入ったビロードのスリップワンピースに、タキシードタイプのロングジャケットを羽織るか。

フロント一面にリアルフェザーをあしらった、シルクタフタのロングドレスも候補に挙がる。どれも悪くはない。が、今の気分になぜだかフィットしない。

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タンゴという音楽を通じてファッションを考える

そんな折、ふと見つけたのが、ボタニカルダイという手法で染められたオールインワン。南米のコーヒーで色付けした生地はニアブラックだが、どこか透け感があって軽やかだ。あとはシルバーのバングルを両腕に添えれば、もう十分。

年齢を重ねた今、五感を研ぎ澄ます場に、過剰な飾り立ては不要と感じる。ミュージックとファッションのかけ合わせからも、自分の感性の変化を知ることはできるのだ。

 

※本記事は2019年9月7日時点での情報です。 ※掲載価格は税抜です。

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EDIT&WRITING :
本庄真穂
イラスト :
青山タルト
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