漁師が着用する、防水・防寒性に富んだ、脱脂しないウールを使ったアランニット。その伝統を今に伝えるのが、1975年にスコットランドで創業したインバーアランだ。ハンドメイドの味わい深さと着やすさで変わらぬ人気を誇るカーディガンをご存知の方も多いだろう。もっとも、カントリーニットだけに、普通に着用するだけでは、都会的な雰囲気を出しにくいアイテムでもある。そこで、メンズプレシャスでも活躍する人気イラストレーターのソリマチアキラさんと綿谷 寛さんが、自らの経験と卓越したセンスで着こなし術を指南。各々が伝説的な洒落者を描くことで、スタイリングのポイントをわかりやすく解説してもらった。文字通り、「絵になる男たち」のコーデ術をご覧あれ!

パンツとシューズを工夫して都会的に着こなす!

イラストのイメージは、洒落者としても知られるジャン・コクトーが現代にタイムスリップして、インバーアランを着たときのイメージ
イラストのイメージは、洒落者としても知られるジャン・コクトーが現代にタイムスリップして、インバーアランを着たときのイメージ

 まずはソリマチさんから。描いたのは、現代にタイムスリップしたジャン・コクトー。タイドアップしたシャツの上にインバーアランのニットをはおって、パンツはウールのチェックパンツ。足元のレザースニーカーが装いに洗練味を添える。
「カントリー色の強いアイテムなので、デニムやワークパンツと合わせてラギッドに着こなすのもいい。ただ、40歳を超えた男が都会でインバーアランを着るとしたら、ある程度ドレッシーにする必要がある。たとえば、タイドアップしたシャツの上にジャケットがわりにそのカーディガンをはおって、パンツはチェックのウールパンツ。足元はレザーのスニーカーなんかがいい。クラシックなカフェやレストランの風景とよくなじむのでは?」

ベストを合わせて大人感の演出と防寒を両立!

デヴィッド・ホックニーをイメージ
デヴィッド・ホックニーをイメージ

 一方、綿谷さんが描いたのは、1970~'80年代にかけて活躍した英国の現代美術家、デヴィッド・ホックニー。作品はもとより、そのスタイリッシュな着こなしはファッション界にも大きな影響を与えた。カーディガンとバギーパンツ、とりわけプリーツの入ったワイドなウールパンツは、今の気分にしっくりくる旬のアイテムだ。

 そんな洒落者を題材に、綿谷さんが設定したスタイリングテーマはずばり「お洒落を頑張っていないこと」。
「50歳を過ぎたあたりから、こういう定番アウターをキメキメで着るのが気恥ずかしい気がして……。インバーアランにしても、デヴィッド・ホックニーみたいなカーディガンとバギーパンツというカジュアルスタイルがちょうどいいんです。アイテムにしてもゆるめに結んだニットタイやローテクスニーカーを合わせて、ほどよい脱力感を演出しました」
 ちなみにインバーアランの下にベストを着るのは、綿谷さんのこだわりとか。

「編み目が粗いローゲージニットなので、冬場は風が通って肌寒い。そこで僕はベストを着ることにしているんですよ。着こなしがぐっと大人っぽくなる効果も期待できます」

 男のファッションを知り尽くした、2大イラストレーターによる競演、いかがだっただろう。センスが凝縮された作品をもとに、自分らしい着こなしを生み出してほしい。

この記事の執筆者
TEXT :
MEN'S Precious編集部 
BY :
MEN’S Precious2016年秋号 英国「名品」アウター着こなしバトルより
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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クレジット :
文/押条良太 構成/山下英介(本誌)