紳士が愛する英国ブランドといえば、まずバーバリーとダンヒルが挙げられる。どちらも創業100年を超える老舗ブランドだ。これらの老舗が先陣を切ってその生産背景を見直し、自国の伝統的なものづくりや、最新の技術を融合した英国名品を世界にアピールする動きが見られる。その進化と革新に満ちた逸品から漂う職人魂に、改めて注目する。
伝統と磨き上げられた職人技
グローバル化が進行した今、生産拠点を海外に移す英国ブランドが増え、イギリスらしさが薄らいでいる。
そんな中、英国での生産にこだわりを持つ老舗がある。それも世界的なラグジュアリーなブランドというから驚くではないか。老舗バーバリーのアイコンともいえるトレンチコートは、産業革命時に栄えた繊維産業の中心地、イングランド北部のウェストヨークシャーの自社工場から生まれる。
■BURBERRY「バーバリー」
ルーツを物語る世界で最も愛されるトレンチコート
180を超える襟のステッチを職人が手作業で施し、首に沿い流れるようなカーブを持った逸品を完成させる。創業者トーマス・バーバリーが考案した革新的素材、ギャバジンの生産をはじめ、今では仕上げの工程にいたるまで、すべてを英国生産で完結。北部の商業都市、リーズにも大型工場を建設中で、トレンチコートのみならず、英国生産のアイテムがさらに増えると聞けば、バーバリーの原点回帰の傾向は確実だろう。
■DUNHIULL 「ダンヒル」
脈々と受け継がれる革職人の手技が光る「名品」バッグ
1893年創業の「ダンヒル」。ドクターバッグに代表される革製品は、ロンドンのイーストエンドにある工房で、一点一点伝統技術を受け継ぐ職人たちによってつくられている。金具には、アルフレッド ダンヒルとロンドンの文字が刻印されている。このブランドにとって、ロンドンに工房を構えることの大きな証だ。
英国とそれ以外の製品との大きな違いは、時代や流行を超え、長く使い続けられる製品が圧倒的に多いことだろう。それを支えてきたのは、英国伝統の職人の技にほかならない。テクノロジーが進化した現代だからこそ、人間の手が生み出すワザや感性がさらなる価値を持つことを、18世紀に産業革命を起こした英国は知っているのだ。類い希な職人魂と彼らが生来持つ「革新」の気概が、次の時代の産業革命を起こすに違いない。
※価格はすべて税抜です。※価格は2016年秋号掲載時の情報です。
- TEXT :
- 小暮昌弘 エディター
- BY :
- MEN’S Precious2016年秋号 紳士の心を昂ぶらせる「英国名品」のすべてより
- クレジット :
- 撮影/戸田嘉昭・唐澤光也・小池紀行(パイルドライバー/静物) スタイリスト/武内雅英(code) 文/小暮昌弘