BAR HOSHI IRIS バー 保志 イーリス 
オリジナルカクテルでジンの虜になる

「真のイギリス国民たるもの、こぞってジンを飲もう。ジンの原料大麦はイギリス農民が育てた作物である」。

 オランダからイギリス王として迎えられたウィリアム3世(在位1689〜1702年)は、ジンを流行らせようと、高らかにこう謳った。17世紀半ばに、オランダ人医師によって生み出されたジンは、アルコールにジュニパーベリー(杜松の実)を漬けて蒸溜し、解熱剤として開発された酒。そんなジンのイギリスでの第二の人生は、こうして始まった。

「ロイヤル・ポバディ(貧乏人でも酔えば王様気分)」と言われるほど、英国で庶民の間に広がったジンは、エールやミルクよりもはるかに安く売られていた。

 結果、安酒であるがゆえに過度の飲酒が深刻な社会問題を起こすことにもなった。18世紀後半のロンドンの都市の様子を、庶民の安酒に縁のない貴族たちは「酒神バッカスの狂信者の狂宴場さながら」と嘆いたという。

 そんなジンのイメージが変わるのは、過度の飲酒が一段落した19世紀の前半になってから。ギムレットにピンク・ジン、そしてマティーニ。無色で他のアルコールとの相性もいいジンは、カクテルという姿で第三の人生を歩むことになったのだった。

プリマス・ジン1/2にライムジ ュース1/2。「数あるジンの中でもプリマス・ジンは極めてバランスのいいジンです」。「バー保志 イーリス」のオーナー、保志さんがすっと差し出したギムレットを目にしたら、あの「ギムレットには早すぎる」の名台詞が浮かぶだろう。

重厚なカウンターが名店の雰囲気を漂わせる

 オーナーは伝説のバーテンダ ーと呼ばれる保志雄一氏。

 数々の銘柄のジンをそろえるが、取材日は、英国海軍御用達のプリマス・ジンを使って大航海時代をイメージした美しい碧色のオリジナルカクテルを即興で披露。カウンタ ーがメインのオーセンティックなバーで、英国談義を交わす時間を愉しみたい。重厚なカウンターの設えが、名店を期待させるバー。

 その期待を裏切らないことは、一杯目のカクテルを飲んだときからわかる。奥のテーブル席のコーナ ーは、シックで落ち着いた空間。大航海時代をイメージした即興のカクテルにあるウエーブスタイルというデコレーション(塩)が、波音を感じさせる。

■バー 保志 イーリス
住所:東京都中央区銀座6-3-7 AOKI TOWER 2F
TEL:03・6280・6466
営業時間/月~土 19時~3時、日・祝日 18時~1時 無休
チャージ¥1,5000 (税込、サービス料別)

この記事の執筆者
TEXT :
掘 けいこ ライター
BY :
2016年秋号ワイン&シャンパーニュ、シェリー、ジン大英帝国が磨き上げた、「美酒」に陶酔せよより
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。
クレジット :
撮影/荒木大甫 構成・文/堀けいこ