1961年に誕生した第35代大統領は、当時のアメリカ国民にとって相当異彩を放って見えたに違いない。選挙で選ばれた大統領としては最も若く、初めての非WASP(ホワイト・アングロ-サクソン・プロテスタント)。そして服装も、それまでの大統領のイメージとは大きく異なっていたのだから。

ジョン・F・ケネディの謎

ジョン・F・ケネディ

当時の米国エリートといえば、WASPの家系に生まれ、アイビーリーグ校を卒業した人物というのが典型。そんな彼らの出自を象徴するアイテムといえば、アイビー校の学生たちがこぞって身につけていたボタンダウンシャツであった。ハーバード出身のケネディもれっきとしたアイビーリーガーだが、なぜか彼が身につけていたシャツはBDではなくレギュラーカラー。そのうえスーツも、アイビー定番のゆったりとしたサック・スーツではなく、スラリとした細身のものを選んでいた。さてその理由とは? 服飾評論家・池田哲也さんはこう推測する。

「典型的なエリートイメージを崩すためとか、新しい大統領像を印象付けるためなどといった説がありますが、私はケネディの青年期の生活が自然に導いた嗜好ではないかと思います。彼は父親の仕事の関係で、青年期に複数回欧州へ渡っています。そこで受けた影響が表れているのでは。一説には、彼が着ていたシャツはシャルべ製だったといわれています。戦略的にBDを避けただけなら、あえてパリのシャツを選ぶ理由はない。それゆえ彼の個人的嗜好が反映された選択と考えられるのです」

ジョン・F・ケネディ
John F Kennedy
1917年生まれ。ニクソンと歴史的な大接戦の末、0.17%の僅差を制して第35代アメリカ大統領となる。勝因のひとつとして、テレビ討論会で氏が着ていた濃色のスーツが力強く信頼感ある人物像を印象付けたという逸話は有名。
<出典>
MEN'S Precious秋号「紳士の装い大全集2019」
メンズプレシャス秋号の表紙
【内容紹介】話題沸騰!「日常を豊かにするアート」を追って富山県へ/不変のパリに再会の投げキッスを!/ジャンニ・アニエッリのスタイルには男の装いに必要なすべてがある/曇りなき清潔感を身にまとう
2019年10月4日発売 ¥1,230(税込)
この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
Faceboook へのリンク
Twitter へのリンク
TAGS: