料理がおいしいとかサービスがいいとか、いいレストランの条件はいろいろありますが、プライベートで本当に気に入って通いたくなる店かどうかは、お店全体の空気感で決まると思っています。ドアを開けて入った瞬間、ここちよい空気が流れているところは大抵いいお店ですね。では、その空気感とは何かというと、空間とシェフやスタッフ、そしてお客の調和だと思います。
店とお客が調和した心から落ち着ける空気感
「オルランド」はそのバランスがすごくいいのです。ここには食業界や服飾業界、芸能関係などさまざまなお客さんが集まっていますが、妙な緊張感が漂うこともなく、とてもオープンで自然な雰囲気。それは「オルランド」という空間にお客さん皆が溶け込み、心からくつろいで食事を楽しんでいるからではないでしょうか。
それを叶えているのは、「オルランド」の違和感のなさだと思います。どんなお店にも、実は違和感というものが存在します。長時間座っていると椅子の高さがちょっと気になってくるとか、ナイフが切れにくいとか、器と料理が微妙に合っていないとか、ごく細かなことなのですが、そういった違和感が積み重なると、なんだか居心地の悪さを感じてしまうのです。「オルランド」はそういった違和感が非常に少ない。とても落ち着ける空間ですし、器の選び方にしても、イタリアの食堂で使っているような〝本物〟の雰囲気が感じられます。
シェフの小串さんはイタリアンの真髄を実によく摑んでいると思います。シンプルで、ブレないベースがある。こちらの『若鶏せせりのバター焼き』のように、本来はイタリアにない料理でも、イタリアの精神でつくるからしっかりイタリア料理になっているんです。
スタイルだけまねしている店も少なくないなか、小串さんはすごく食いしん坊で、どうしたらもっとおいしくなるかを貪欲に追求しています。そこが素晴しいですね。鋭い美味しさがあるリストランテの料理も素晴しいのですが、イタリア料理は日常の旨さが本質だと思います。その本質的な楽しさがこの店にはあります。
植野氏が推薦する若鶏せせりのバター焼き
実はこちらでは、いつも注文をせず、お腹の減りぐあいだけ伝えて小串さんのおまかせでつくってもらっているんです。仕事目線を入れてしまうと、今日の食材はどういうものかなとチェックしたり、いろいろなワインを試してみたりと、つい考えてしまうのですが、ここはそういうことを考えなくてもいいラクさと、それでもきちんとおいしい料理を食べさせてくれる満足感があります。
仕事終わりに食事をするときもありますし、最後にワインを飲みに来ることもあります。このカウンター席に座って、小串さんと話をしながらおまかせの料理とワインをいただいていると本当に落ち着けますし、とてもここちよいのです。(談/『dancyu』編集長・植野広生)
「Orlando(オルランド)」
- Orlando TEL:03-6427-0579
- 東京都目黒区青葉台3-1-15
営業時間/18:00~ ※完全予約制日曜休
※2019年秋号掲載時の情報です。営業時間などの詳細は、HPなどでご確認ください。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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