2019年9月、ブランド初のラグジュアリーヨットをマイアミで初披露したLEXUS(レクサス)。世界の富裕層にとって、ヨット・セーリングは嗜みのひとつであり、そこに確固たる高級車メーカーとしての地位を築いたLEXUSが参入した。クルマ仕込みの美しい艇体は、地上も洋上でも、移動が等しく快楽につながることを教えてくれる。

そもそものスタートは、コンセプトモデルとして2017年1月に発表されたオープンクルーザー「LEXUS Sport Yacht Concept」にある。マリンライフ愛好者に驚きをもって迎えられていたこの船は、船首から船尾にかけて一筆で書き起こしたような流麗なラインが特徴で、一見して、スポーツカーの文法に則ったプロポーション。エンジンは、ラグジュアリー・クーペ、LEXUS LCに搭載されている5リッターV8エンジンを2基搭載していた。

コンセプトモデルとして発表されたLEXUSのオープンクルーザー

コンセプトモデルとして2017年1月に発表されたLEXUS Sport Yacht Concept
コンセプトモデルとして2017年1月に発表されたLEXUS Sport Yacht Concept

LEXUSがなぜ船を? という疑問に、チーフブランディングオフィサーの豊田章男氏は当時、「LEXUSが提供するライフスタイルを拡げる新たなモビリティの提案」である、と話した。その言葉通りに、さらなるモビリティ・ライフの準備は着々と進められていたのだろう。

LEXUS Sport Yacht Conceptは約40フィート(12.7m)と、小型クルーザーの趣だったが、2019年9月に登場したLY650は、ラグジュアリー層には標準的と言える、65フィート(約20m)という中型ヨットのカテゴリーとなる。

このサイズは一般に、オーナーが自ら操舵するサイズとしては最大級となる(当然、クルーの乗船も必要だが)。まずはこのカテゴリーに参入したLEXUSの思惑としては、ショーファードリブンカーではなく、オーナーが自らステアリングを握る、スーパースポーツカーのイメージとの連続性を大事にした、とも考えられる。

LEXUS初のラグジュアリーヨット「LY650」

LY650の船体は、アメリカを代表するヨットビルダーのひとつ、Marquis Yacht社と共同開発した。炭素繊維強化プラスチックと硝子繊維強化プラスチックをハイブリッドさせた最新の船体設計は、LEXUSの持つトヨタ生産方式によって、効率化とさらなる品質向上をもたらしたという。

海上のプライベートリゾートを約束してくれるラグジュアリーな空間

  • LEXUS「LY650」の内装1
  • LEXUS「LY650」の内装2
  • LEXUS「LY650」の内装3
  • LEXUS「LY650」の内装4

さらに、インテリアはイタリア・ヴェネチアに本拠を構えるNuvolari Lenard社とコラボレーション。LEXUS車で養った緻密な細部の仕上げに、ハイエンドのカスタムヨットを多数手がけるNuvolari Lenard社のエレガントかつ大胆な仕様がマッチした、ウォーミィなモダンインテリアが、ラグジュアリーな世界観を現実のものとしている。

そもそも、究極のラグジュアリーライフとは、日常のあらゆる束縛から解き放たれた、私的な空間を確保することから始まる。時間と空間の独占は、古来より王侯貴族が夢見た永遠の生への憧れにも似るが、海と陽のあわいに浮かぶ、LEXUSのラグジュアリーヨット「LY650」には、地上とは別の時間が確かに流れる。

’89年にクルマのブランドとしてスタートして30年、驚きと感動を提供するライフスタイルブランドとして成長したLEXUSのひとつの回答として、この麗しきヨットは処女航海へと舫い綱を解いた。最新テクノロジーと匠の技の融合でつくり上げた65フィートの麗しきヨットは、「永遠」を見つけに行ける、究極の道具である。

LEXUS「LY650」

LEXUS「LY650」
LEXUS「LY650」

全長:19.94m
全幅:5.76m
エンジン:Volvo Penta IPS 1350/1200/1050
燃料タンク容量:4,012L
清水タンク容量:852L
客室数:3部屋(ベッド6名対応)
価格:約4億5千万円(仕様はカスタムされるため価格は目安)

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EDIT&WRITING :
神山敦行