ストラディヴァリウスが楽器製作者アントニオ・ストラディヴァリによってつくられたのは、17世紀後半から18 世紀にかけてのこと。この期間と時を重ねる1678年、同じトレンティーノのメッツォロンバルドに、現存するイタリア最古の蒸溜所ヴィッラ・デ・ヴァルダ社が誕生している。そのヴァルダ社が願い続けてきたのが、ヴァイオリンの森の赤モミでできた樽で熟成させた最高級のグラッパをつくることだった。
ストラディヴァリウスの響きを舌と耳で味わう
一般に、樽の成形は、オークやサクラの木の板を火で炙あぶって曲げる方法を採る。が、炙るやり方では、赤モミが持つ樹脂が熱で変質して、グラッパの味と香りにダメージを与えてしまう。そこでヴァルダ社が開発したのが、蒸気を当てて赤モミを曲げるという特別な技術だった。
グラッパの原料は、ヴィナッチャとよばれる、ワインを絞った後にのこる葡萄の絞りかす。ヴァルダ社は、その葡萄に、自社の畑で栽培、収穫した質の高い地場品種のみを使用。新鮮なヴィナッチャを銅製釜で6回蒸留するなどの工程を経た後、赤モミの樽で5年という長い年月をかけて熟成する。こうしてでき上がったグラッパには、ストラディバリウスの森に敬意を評し「ヴィブラツィオーニ(響き)」の名が付けられた。
ヴィッラ・デ・ヴァルダ『ヴィブラツィオーニ』
グラッパは食後酒として親しまれているが、「ヴィブラツィオーニ」のやわらかな味わいは、食中酒としてもおすすめ。そして夜更けには、ひとり書斎でブランデーのように楽しむのもいい。そんな、ジェントルマンのためのグラッパだ。
問い合わせ先
※営業時間などの詳細は店舗HPなどでご確認ください。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- PHOTO :
- 西山輝彦
- WRITING :
- 堀 けいこ