気が早いようだが、この冬に着るべきコートを吟味するのは、今を措いてほかにない。伊達男を気取るなら、注目すべきは、往年のダンディがスクリーン狭しと活躍した1930年代の名画に登場するようなロングコート。さらには、ぱりっとしたスーツを着て仕事をするニューヨーカーのスタイルだろう。ここでは、そんなスタイルが際立つオーダーコートの仕立てかたを紹介したい。

アメリカの古きよきにおいを形づくる

 奥渋谷の一画にたたずみ、マンハッタンの古いにしえの探偵事務所を彷彿させる「テーラー・ケイド」は、ゴールデンエイジ(1950年代)の強いアメリカを象徴する男らしい服を求める客にとって、聖地のような店だ。オーナー兼マスターカッターの山本祐平氏は、1930〜60年代の映画に登場する俳優たちのスタイルや、ニューヨークで生活する男たちが仕事で着る服をイメージして、服を仕立てる。もちろんコートも同様だ。

 「スクリーンに映し出された、コートを着た俳優の後ろ姿やたたずまいが、抑制の効いた男のスタイルの原風景になっています。彼らが着ていたコートは、ひざ丈まであるロングレングス。その雰囲気が最高です」

 山本氏が考える男の服のサイズ感は、ミディアムフィットのスーツに対して、コートはラージフィット。たとえば、1枚目の写真のバルマカーンコートは、映画『シャレード』に出演したケーリー・グラントのコートが基になった一着。これまでも人気だったコートを、ブラッシュアップして再登場させたのだ。一生もののコートを誂えるにふさわしい、名優たちのスタイルにも寄り沿えるコートがここにある。

ロングレングスのシルエットは往年の名優や芸術家の香り

1.最大の特徴となる、なで肩のラグランスリーブ。そで回りを太くデザインしたため、そでのなかで一切ひっかからずに、厚手のツイードジャケットやセーターを着られる。2.ライニングを省いた大見返しの一枚仕立てで、ゆったりとしたAラインを形成する。イタリアの名生地ブランド「カチョッポリ」のコットン素材を使用。
1.最大の特徴となる、なで肩のラグランスリーブ。そで回りを太くデザインしたため、そでのなかで一切ひっかからずに、厚手のツイードジャケットやセーターを着られる。2.ライニングを省いた大見返しの一枚仕立てで、ゆったりとしたAラインを形成する。イタリアの名生地ブランド「カチョッポリ」のコットン素材を使用。
後ろ姿からもはっきりとわかる、ゆったりと大きなAラインが特徴。スタイルの見せ所となる、なだらかさを強調した肩のラインは、いかり肩の体型の人でも、なで肩に見える独自のパターンを取り入れている。

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後ろ姿からもはっきりとわかる、ゆったりと大きなAラインが特徴。スタイルの見せ所となる、なだらかさを強調した肩のラインは、いかり肩の体型の人でも、なで肩に見える独自のパターンを取り入れている。

どっしりとしたツイード素材とコートのシルエットがマッチ!

1.襟裏は表地の共地を使用しているため、襟を立てた粋な着こなしも楽しめる。襟の縁に施した、1.2㎝幅のフルミシンステッチは、コートのラインが際立つ効果的な仕様だ。2.肉厚のツイード生地のため、フルカフスではなく、実用的なハーフカフで仕上げたそで口。ふたつのボタンを配したデザイン。ハーフカフはポケットのフラップとも綺麗に響き合う。
1.襟裏は表地の共地を使用しているため、襟を立てた粋な着こなしも楽しめる。襟の縁に施した、1.2㎝幅のフルミシンステッチは、コートのラインが際立つ効果的な仕様だ。2.肉厚のツイード生地のため、フルカフスではなく、実用的なハーフカフで仕上げたそで口。ふたつのボタンを配したデザイン。ハーフカフはポケットのフラップとも綺麗に響き合う。
アイビーの香りを漂わせたセンターフックベントをデザイン。フックベントは、左右の生地を深く重ねたパターンになるため、歩いていても生地が広がらず防寒性を保てる。機能的で洒落たディテールだ。
アイビーの香りを漂わせたセンターフックベントをデザイン。フックベントは、左右の生地を深く重ねたパターンになるため、歩いていても生地が広がらず防寒性を保てる。機能的で洒落たディテールだ。

いかがだろうか。オーダーの世界は広くて奥が深いもの。ほかにはない一着を手に入れるなら、オーダーは必然。長く着られるからこそ、男の究極の着道楽は、注文服に収斂するのである。

オーダーできる他のコート/チェスターフィールドコート、ポロコートなど
オーダーの形式/フルオーダー、パターンオーダー
オーダーの仕方/要予約
期間/フルオーダーは約2か月(仮縫い1~2回を含む)、パターンオーダーは約1か月半
価格の目安/バルマカーンコート¥188,000~(パターンオーダーのみ)、トップコート¥280,000~(フルオーダーのみ)(※価格は2016年冬号掲載時の情報です。)
お問い合わせ先
テーラー・ケイド 
TEL:03-6685-1101
http://www.tailorcaid.com

この記事の執筆者
TEXT :
矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
BY :
MEN'S Precious2016年冬号 凄腕仕立て職人の渾身の技をフルオーダーで堪能せよ!「一生ものコート」なら、ビスポークすべしより
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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クレジット :
撮影/小池紀行(パイルドライバー/静物)、篠原宏明(取材/東京)、 小野祐次(取材/パリ) スタイリスト/武内雅英(code)  構成/矢部克已(UFFIZI MEDIA)
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