写真家、映画監督として活躍する蜷川実花さんが、Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』で初めてドラマに挑戦。TOKYOを舞台に、自らの手で成功を手にした女性たちと、無限の可能性を秘めた若者たち、2世代の女性たちの生き方を描いた郡像劇です。

そこでPrecious.jpでは、蜷川監督に本作品に込めた想いだけでなく、ファッションについて、女性の幸せな生き方とは? リーダーシップの取り方とは?など、多方面のお話を伺いました。

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ドラマ『FOLLOWERS』より
ーー作品中で、第一線で活躍する写真家の主人公リミ(中谷美紀)は、自分にとって最良の仕事をし続けようと努力しています。蜷川監督は、どういう考え方を持ち、どういう選択をすれば、ポジティブな結果を得られると思いますか?
私は映画でもドラマでもそうですが、自分で思考して、自分で決めて、そのことに責任を持つということが、すごく重要なのではないかなと思っています。
幸せの定義というのはなかなか難しくて、それは本人が幸せだと思ったら、幸せなのではないかと考えています。お金があるからとか地位があるからとか、美しい=幸せなのかと言ったらそうではない。自分にとって大切なことは何か、自分にとって幸せとは何か?ということは、人それぞれであっていいわけです。
私は、そこをつかみ取れる強さというものを持てればいいのではないか、と思いながら、いつも作品を作っています。
ーー蜷川監督は、ご自身の幸せを得るために、どういう決断をされていますか?
私はないものねだりというか、モノを作る時に、ネガティブなことがエンジンになることが多いです。こんな嫌な思いをしたから絶対負けたくないとか(笑)、私に期待していない人たちにギャフンと言わせたいとか(笑)。
基本的に、幸せなのはわかっているんですが、ついつい自分に欠けているとか、自分が持っていないものにフォーカスを当ててしまい、そこがエンジンになって、もっと頑張ろうというやり方をしています。
そういう欠けているところを発見すると、めちゃくちゃ落ち込みますが、私は回復が速いんです。例えば、昨年は『Diner ダイナー』『人間失格  太宰治と3人の女たち』と、映画を立て続けに公開したので、映画評を見れば落ち込み、あの人がこう言ってたで落ち込み(笑)。現場でうまくできなかったと思って、また落ち込みます。
いろいろありますけど、私はあまり傷つくことが怖くないんです。そこから回復していく道筋で、得る物もたくさんあるので。落ち込みがあったから、プラスになる。仕事を始めた初期からそうやっているので、その訓練はできているかなと思います。
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ドラマ『FOLLOWERS』より
ーーキャラクターそれぞれのファッションやメイク、インテリアのこだわりについて教えてください。
事細かに作ったと思います。このキャラクターだったら、どの携帯ケースを持っているか。最新機種なのか、もしくは何世代前かとか、この子は携帯の画面が割れたまま使っているはずだ、という分析をしました。携帯カバーはキャラクターが出ますよね。リミだったらDior、実業家のエリコ(夏木マリ)だったらGUCCIだね、とか。
最初は携帯電話から話し合ったかもしれません。それが決まると、じゃあ彼女はこんな部屋に住んでいるかもね、というふうに、キャラクターがさらに膨らんでいきました。携帯ケースと化粧ポーチはかなりしつこくディスカッションしました。
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ドラマ『FOLLOWERS』より
ーードラマではGivenchy、GUCCI、CYCLAS、TAE ASHIDA、NEIL BARRETT、TADASHI SHOJI、KEITA MARUYAMA、ANNA SUI、MIUMIUなどのドレスからTiffany、TASAKIといった宝飾、Christian Louboutinの靴など、見ているだけでウキウキするファッションが登場します。
ガラパーティーのシーンだけで総額数億円のドレス、ジュエリーを使用していたそうですね。ブランドさんからかなりの商品の貸し出しをされたのではありませんか?
衣装とヘアメイクに関しては、全部こだわっています。全体の5分の1くらいが私の服なんですよ。(リミのマネージャーである)ゆる子(金子ノブアキ)の服もそうだし。いちばん私の服を着ているのは、リミさんかな。なつめ(池田エライザ)も着ています。
この映画では自慢できるくらい、たくさんの衣装を借りることができました。日本の映像の仕組みだと難しいのではないかな…と思えるほど、たくさんの方たちに助けていただいています。普段ファッションの業界にいるから、できたことなのかなと思っています。お洋服も、見どころのひとつですね。
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ドラマ『FOLLOWERS』より
ーー「FOLLOWERS」で描きたかったこととはなんでしょうか?
女性を描いているドラマはたくさんありますが、みんな結婚したいしすごく悩んでいるし、いつも大変そうにしているものが多いと感じでいて。
でも、大変なこともあるけれどベースは人生って楽しくない? と思うところがありました。ひとつ伝えたかったメッセージとしては、「大人って楽しいよね」ということ。
そして、多様性があっていいということです。結婚してもしなくてもいいし、子どもがいてもいなくてもいい。そうした女性の人生観みたいなものを、しっかり入れたいと思っていました。
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ドラマ『FOLLOWERS』の撮影の様子
ーー蜷川監督がキャリアを築くことにおいて心がけてきたこと、リーダーとして現場を引っ張っていく上でどんなところに注意してきましたか。
映画監督は男性が多いですし、マウンティングしてリーダーシップを取られる方もいると思うのですが、そのやり方は、私には向いてなくて。自分のスタイルを貫こうと思ったら、相当変わったスタイルになったみたいです(笑)
現場を引っ張っていく上では、私は周りに助けてもらおうという作戦です。「あの人あんなこと言うなんてバカなの!? でも、絶対やるって言ったらやりたいんだろうから、やってあげよう」みたいな(笑)。
ただ、判断だけはクリアにしていて、決断はすごく早いです。そこが揺らいでしまうと、みんなが崩れてしまうので。好き嫌いも、やりたいことやりたくないこともすごくはっきりしているので、判断はめちゃくちゃ早いと思います。相手を巻き込む、手伝ってもらう、喜ぶ、みたいな感じでしょうか。
ーーきっと蜷川監督の熱量に、みんなが巻き込まれていくような感じなんでしょうね。
私は写真も独学ですし、映画も何も教わっていない状態で入っているので、わからないことはわからないって言うしかありませんでした。
頼るところは頼らなければ絶対にできなかったので、全部を背負い込まないようにしようと。弱いところも周りに散々見せていたと思います。それによって助けてくれたり、意見を言った方がいいかな? 思ったことを言ってもいいんだ!という空気になってきたのは、あると思います。
でも、リーダーとしては、絶対ブレない。やりたいことははっきりして、目標設定はあそこです、と示すことは、必要かもしれないですね。
ーードラマではあらゆるラグジュアリーを目にすることができますが、蜷川監督にとってのラグジュアリーとは?
自分の価値観で生きられることです。例えば、高い宿に泊まりたい時もありますが、海外に行ったら千円、二千円の宿にも泊まります。
私はHIGH&LOWなことが多いので、その辺の居酒屋にもいますし、高いごはんを食べにいく時もある。スーパーの特価品を買う時ももちろんありますし、どうしても美味しいお菓子が食べたい時は、高いお菓子も買います。金額ではなくその価値に見合っているか、という物差しを自分で持っているかだと思うのです。
ーー定番の質問なんですが、蜷川監督が最近購入された、プレシャスなモノとはなんですか?
つい数日前に絵を買いました。『FOLLOWERS』も担当している美術のENZOくんがギャラリーをやっていまして。打ち合わせに行った帰りにギャラリーを見ていたら、そこに置いてあった絵が欲しくなって、買いました。
永戸鉄也さんの『Two People and One』という作品です。絵はそんなに買いませんが、これだなと思ったら買います。年に2、3回かな。これ、気持ちがザワザワするでしょ。そういうのが好きです。
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「Two People and One」永戸 鉄也 2019 Oil on Canvas 
ーーところで、ファッション誌『Oggi』で、蜷川監督が撮影していた連載企画『悪い男』が1冊の写真集になりました。永山瑛太さん、松坂桃李さん、斎藤工さんなど、26人のそうそうたる顔ぶれに圧倒されますが、撮影中の思い出などはありますか?
おかげさまですごく売れているみたいですね。発売前に3刷になったと聞き、私もうれしいです。この連載は、編集の方が毎回設定する女子の妄想があって、「もしもこの人がこんなんだったら……」というテーマに沿って私が撮る企画でした。設定がすごく細かいし、なんとも妄想が激しくて(笑)。
よくこんな方たちを撮れたなぁと思うくらい豪華で、あれだけいろいろなタイプの男性が一堂に見られる本は、ないんじゃないかなと思います。
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写真『悪い男』撮影/蜷川実花 本体¥2,700(税抜)

『悪い男』の詳細

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FOLLOWERS』番組詳細

TOKYOを舞台に、人気写真家の奈良リミと女優志望の百田なつめを中心に、仕事も恋も一切妥協せず、貪欲に幸せをつかもうとする女性たちの姿を描いた群像劇。
監督:蜷川実花 出演:中谷美紀 池田エライザ 夏木マリ 板谷由夏 コムアイ 中島美嘉 浅野忠信 上杉柊平 金子ノブアキ 眞島秀和 笠松将 ゆうたろう
2020年2月27日(木)、Netflixにて全9話世界190カ国へ独占配信。公式サイト #FOLLWERSNetflix

本_2,東京_1
蜷川実花さん
写真家、映画監督
(にながわ・みか)東京都生まれ。写真家・映画監督。写真では木村伊兵衛写真賞ほか受賞歴多数。2008年「蜷川実花展」が全国の美術館を巡回。10年、Rizzoli N.Y.から写真集を出版、世界各国で話題に。16年、台湾の現代美術館MOCA Taipeiにて大規模な個展を開催し、同館の動員記録を大きく更新した。17年、上海で個展「蜷川実花展」を開催。個展「蜷川実花展  ー虚構と現実の間にー」が全国の美術館を巡回中。映像では、映画『さくらん』(07年)で映画監督デビュー。『ヘルタースケルター』(12年)『Diner ダイナー』(19年)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19年)を手掛ける。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事。蜷川実花さん公式サイト
この記事の執筆者
生命保険会社のOLから編集者を経て、1995年からフリーランスライターに。映画をはじめ、芸能記事や人物インタビューを中心に執筆活動を行う。ミーハー視点で俳優記事を執筆することも多い。最近いちばんの興味は健康&美容。自身を実験台に体にイイコト試験中。主な媒体に『AERA』『週刊朝日』『朝日新聞』など。著書に『バラバの妻として』『佐川萌え』ほか。 好きなもの:温泉、銭湯、ルッコラ、トマト、イチゴ、桃、シャンパン、日本酒、豆腐、京都、聖書、アロマオイル、マッサージ、睡眠、クラシックバレエ、夏目漱石『門』、花見、チーズケーキ、『ゴッドファーザー』、『ギルバート・グレイプ』、海、田園風景、手紙、万年筆、カード、ぽち袋、鍛えられた筋肉