一年をかけてゆっくり一周するダイヤルが、移ろいゆく四季を映し出すという『レディ アーペル センテナリー ウォッチ』。この誕生は時計界にある意味、大きなセンセーションを巻き起こしたが、その背景をプレジデント兼CEOのボス氏はこう述懐する。

メゾン初のメンズウォッチは創業者一族の紳士が生み出した

創業者一族のピエール・アーペル。メゾン初のメンズウォッチは「自分だけの個性的な時計が欲しい」と自らデザインした。
創業者一族のピエール・アーペル。メゾン初のメンズウォッチは「自分だけの個性的な時計が欲しい」と自らデザインした。

「当時私は、クリエイティブディレクターとマーケティングディレクターを兼任しており、腕時計制作にも力を注いでおりました。時計でもジュエリーでも、われわれがなし遂げようとしていたことは、主に、メゾンのアイデンティティを表現することです。それを時計で実現するためには、ウォッチメイキングのテクニカルな部分を超える必要がありました」

数多のマニュファクチュールとは一線を画す、独自の創造性。それは「ポエティック コンプリケーション」という不世出の複雑時計によって確立された。

「われわれが想像していた以上に前向きでいい反響を頂いたので、以降も継続させていくことになりました。さまざまなテーマ、アプローチで、「ヴァン クリーフ&アーペル」独自のコンプリケーションウォッチをお届けし、複雑機構と宝石との融合を世界の女性たちに楽しんで頂くことは、われわれの喜びとなり、その思いは今も変わりません」

当初女性ユーザーを想定していた「ポエティック コンプリケーション」だったが、時計好事家の男性たちからも高い評価を得、メンズモデルを所望する声は年々高まっていった。それに応えるのが、「ポエティック コンプリケーション」を男性的に表現した一連の『ミッドナイト』コレクションだ。

「時計は歴史的にみて、男性の世界です。ヴァン クリーフ&アーペルはもともと女性の宝石のメゾンでスタートしていますが、1940年代には創業者一族のピエール・アーペルによって、彼の名前を冠したメンズウォッチを制作していました。男性が装飾品でどのように自分を表現するか?いろいろな解釈がありますが、このシンプルで非常にエレガントな紳士の時計が、現在の『ミッドナイト』の礎となっています。現在、われわれが手がける物語のある装飾時計は、男性的なスポーツウォッチとは違いますが、私は男性も詩的な要素を好んでいると思います。詩的さを添えることこそ、ヴァン クリーフ&アーペルのアイデンティティにかなうのです」 

ニコラ・ボス(Nicolas Bos)さん
ヴァン クリーフ&アーペル プレジデント兼CEO
2000年、ヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリー部門のクリエイティブディレクター兼マーケティングディレクターに就任。腕時計制作にも情熱を傾ける。ヴァイスプレジデント、ヴァン クリーフ&アーペル アメリカのプレジデントを歴任し2013年から現職。
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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2020年冬号より
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唐澤光也(RED POINT)