日本人はクルマを大切に扱う傾向が強い。1〜2度の車検やモデルチェンジごとに乗り換える慣習も関係しているのだろう。おかげで世界的に見ても良質な中古車が多く、近年はそんな状況に目を付けた海外のバイヤーがこぞって買い付けるようになり、相場は高騰している。

だれもが一目でわかる不変のデザインは年代が遡さかのぼるほど純度を増していく

今もなお革新を続けるポルシェ『911』

スリリングなスポーツカーの味と優れた実用性を備え、今もなお革新を続ける『911』。写真のモデルはナローと呼ばれる初期型の1971年式。ルーフからリアエンドにかけてのラインがひときわ美しい。「空冷エンジンの迫力をダイレクトに感じたい」というオーナーの意向で、ボディ後部のエンジンカバーが金属から薄いFRPに交換されている。価格相場は800万~1億円。
スリリングなスポーツカーの味と優れた実用性を備え、今もなお革新を続ける『911』。写真のモデルはナローと呼ばれる初期型の1971年式。ルーフからリアエンドにかけてのラインがひときわ美しい。「空冷エンジンの迫力をダイレクトに感じたい」というオーナーの意向で、ボディ後部のエンジンカバーが金属から薄いFRPに交換されている。価格相場は800万~1億円。

ポルシェ『911』の場合、’90年前後の空冷エンジン搭載モデルの相場が、ここ10年で3倍に跳ね上がった。写真の初期モデルにいたっては、1000万円台はあたりまえ!ポルシェに限らず、状態のいいクルマはどんどん日本から去り、すでにレッドリスト化したものも多い。希少価値はそのまま値段に反映する。だから、いつか手に入れるつもりで様子をうかがっている暇はない。「欲しいと思ったときが最安値」なのだ。

現代のクルマは、安全性や生産効率など様々な条件を考慮して設計されるため、個性が出にくい。対して、ヴィンテージカーにはつくり手の強い意志が感じられ、年月を経て生じた差異も個性を際立たせる。そんな、無二の名車と過ごす日々がつまらないわけがない。相応の維持費は、乗るたびに感じる刺激の対価だ。

本来、ヴィンテージカーとは1930年代までにつくられたものを指す。それらはもはや骨董品レベルだが、大量生産が始まった’50年代以降のクルマなら、きちんと整備していれば休日の主役として起用できる。まずは、魂が震えるほどの刺激を秘めた名車の数々、そしてヴィンテージカーライフを楽しむファッション業界人たちの姿をご覧になっていただきたい。彼らは皆、欲しいと思ったら迷わず実行に移している。手に入れるなら、今だ!(文・櫻井香/本誌エディター)

※2019年秋号掲載時の情報です。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2019年秋号より
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