イラストレーターという仕事上、フランス車を描く機会が多く、実際に10数台所有してわかったのは、「フランス車は、変わっているが美しい」ことだ。機能がカタチに表れているため、エキセントリックなデザインが多い一方で、機能性が高いゆえ、「美しさ」が宿ったクルマもある。フランスを代表するスポーツカー、アルピーヌ『A110』が、まさにそう。低く小さく、余計な要素を削ぎ落とした姿は確かに美しい。

合理的観点に基づく設計が無二の個性と速さを生み出した

フランスを代表するスポーツカー、アルピーヌ『A110』

1963年に登場。軽量ボディと強固なシャシー、そしてリアエンジンの強力なトラクション性能で、ラリーでは特に強さを見せた。1,000ccから始まったエンジン排気量は1,100cc、1,300cc、1,500ccと拡大し、’69年にはシリーズ最大の1,600ccとなる。写真のモデルは後期の1600Sで、車重はわずか700㎏強! 中古車相場は600万~1800万円。
1963年に登場。軽量ボディと強固なシャシー、そしてリアエンジンの強力なトラクション性能で、ラリーでは特に強さを見せた。1,000ccから始まったエンジン排気量は1,100cc、1,300cc、1,500ccと拡大し、’69年にはシリーズ最大の1,600ccとなる。写真のモデルは後期の1600Sで、車重はわずか700㎏強! 中古車相場は600万~1800万円。

車体が小さいのにも理由がある。合理的に物事を考える彼らは、スポーツカーにおいてもやみくもにパワーを上げて速くするのではなく、いかに小さなエンジンで効率的に速く走れるかを考えた。そのためには、車体は空力に優れ、小さく、軽いほうがよかった。スポーツカーにとって、軽さは大きな武器だ。その点でも実にフランス車らしい。だから『A110』は、フランス車好きの究極の夢のひとつなのである。

週末の早朝、ガレージから『A110』を出し、薄暗いワインディングに漂う霧にイエローバルブを輝かせて走りたい。服は、気負わず’70年代フレンチ・ヴィンテージのワークジャケットを合わせて。(文・遠藤イヅル/イラストレーター)

※2019年秋号掲載時の情報です。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2019年秋号より
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戸田嘉昭(パイルドライバー)