20年ほど前、Route66を走る旅に出た。レンタカーショップには各国の名車が並んでいたが、迷わずアメリカのクルマ(ダッジの4WD車)を選んだ。アメリカの広い大地に必要なのは、鼓動と風を感じるパワー、そして何ものにも負けないダイナミックなデザインであり、豪奢すぎる装備や操作性のよさ、静けさなど必要なかった。

アメリカの景色の中で見たくなる’60年代スポーツカーのアイコン

フォード『マスタング』

初代は1964年に登場。ベースモデルの装備を簡素化して価格を抑え、ATやビニールレザーシートほか、多くのオプションが選べる「フルチョイスシステム」の導入で大ヒットした。中古車相場は350万~500万円。写真のモデルは5リッターV8エンジン搭載の「クーペ302」(’ 67年式)。(撮影協力/フレックスオートレビュー横浜本店
初代は1964年に登場。ベースモデルの装備を簡素化して価格を抑え、ATやビニールレザーシートほか、多くのオプションが選べる「フルチョイスシステム」の導入で大ヒットした。中古車相場は350万~500万円。写真のモデルは5リッターV8エンジン搭載の「クーペ302」(’67年式)。(撮影協力/フレックスオートレビュー横浜本店

何度も地平線を越えて、ひたすら直線を走る。ときに見えてくる小さな町やガスステーションとモーテルに少しほっとする、そんな毎日を過ごした。

アリゾナを走っているあたりで、あることに気づいた。自分が乗るクルマも、すれ違うクルマも、みな輝いていることに。派手な色も、黒も、日本で見るよりもバキッとした印象だ。アメリカの景色は、クルマを強く見せると気づくのに、そう時間はかからなかった。

前回の旅は砂漠を走ることもあって4WD車にしたが、次は絶対にスポーツカーを選ぶ。僕の理想はフォード『マスタング』。それもシンプルなラインでデザインされた初代モデルだ。日本では気品さえ感じるその姿が、アメリカではどう映るのかが見たくてたまらない。(文・石川英治/スタイリスト)

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2019年秋号より
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戸田嘉昭(パイルドライバー)